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Re: 【短編小説】たぶんセックスしないと出られない部屋②

「ちょっと、見過ぎっしょ。ウケる」
 アイカは薄い唇を持ち上げて笑った。
「って言うか、ナカハラツバサ?寝過ぎじゃね?」
 アイカは咎めると言うより、とりあえずと言った感じていい加減な会話を続ける。まるで喋っていないと窒息でもしそうだった。
 それが彼女たちの文化なのだろうか。
 この状況をあまり怖いと思っていなさそうに見えるが、そうでもないのだろうか。

 アイカは手首に巻いた細い針金のようなブレスレットをシャラシャラと鳴らしながら続ける。
「なんかそこの鏡?がある机?みたいなところに、このメモ?みたいなのが置いてあって、なんか両方?ってことはアタシとお兄さん?だと思うんだけど、そこのドアの傍にある電話?みたいなので話を聞けって書いてある」
 薄青色のシャツを着てやたら短いスカートを履いたダボダボ靴下のアイカはやたら疑問符を付けるように、頻繁に語尾を上げながら話す癖がある。
 だから別にそれがどうと言う訳じゃない。

 喋り終えたアイカが短く息を吐いた。
 起きたんならアンタが電話しなさいよ、と言う事だろう。
 たしかにドアの傍に簡素な壁掛け電話が置いてあった。内線電話だろうが、どこに通じているのか。
 俺は例によって高い声で「うん」と答えて寝台から立ち上がった。
 寝台の下に置いてあったスリッパを引っかかけて、ドア脇の受話器を手にした。

 プルル、と電子音が鳴る。
 何がどうしてこうなったんだろう。
 目を覚ますと俺は知らない部屋で寝ていた。部屋には知らない女がいた。女はたぶん女子高生か何かで、俺は社会人なのだろう。
 プルル。
 ふたりとも自分のことは覚えている。それが偽物の記憶でない保証は無いが、偽物だもしたら合理性が無い。
 プルル。
 いま自分が何を理解しているのか分解してみたが何かの役に立つとは思えなかった。


 受話器を戻すのと同時だった。
「ねぇ、なんだって?」
 薄青色のシャツを着てやたら短いスカートを履いたダボダボ靴下の女子高生アイカは、やたら長く尖った爪で自分の蝶ネクタイをいじりながら俺に訊いた。
「何かよくわからない」
 俺は自分の高い声がさらに上ずっているのを聴きながら答えた。

「なにそれ、ウケる」
 薄青色のシャツを着てやたら短いスカートを履いたダボダボ靴下の隠れ秘密巨乳女子高生アイカは蝶ネクタイの角度に満足したのか、俺を見て笑った。
「何でわかんないの?日本語じゃなかったとか?」
「いや、日本語だったんだけど、なんか変なこと言ってて」
 そう、変な事だ。

 ありえない。なんで俺が?なんで彼女と?
「変なんだよ」
 コントロールしようとすればするほど、自分の声がどうにも震えているのがわかった。
 もしかしたら本当に自分は震えているのかも知れないと思った。
 それは恐怖か。または武者震いか。

「ってかアタシも聴きたい」
 薄青色のシャツを着てやたら短いスカートを履いたダボダボ靴下の褐色肌隠れ秘密巨乳女子高生アイカは雑に立ち上がると、こちらに歩み寄ってきた。
 俺は受話器を外して薄青色のシャツを着てやたら短いスカートを履いたダボダボ靴下の褐色肌隠れ秘密巨乳金髪メッシュ女子高生アイカに手渡した。

 受話器を耳に当てていた薄青色のシャツを着てやたら短いスカートを履いたダボダボ靴下の褐色肌隠れ秘密巨乳金髪メッシュGALメイク女子高生アイカは「は?ふざけんなし」と言うと俺に受話器を突き返した。


 そしてそのまま座っていたマットに戻ると長いため息を吐いた。
「いや、アタシは厭だし」
 薄青色のシャツを着てやたら短いスカートを履いたダボダボ靴下の足首非サリーちゃん系細身褐色肌隠れ秘密巨乳金髪メッシュ女子高生アイカは頭を抱えて唸った。


「おじさんは良いかも知れないけどさぁ。ってかキモい。なんなのコレ。あり得ないっしょ」
 いつの間にかおじさんを確定された俺は黙って赤いリボン付き薄青色のブラウスを着てやたら短いスカートを履いたダボダボ靴下の足首非サリーちゃん系細身褐色肌隠れ秘密巨乳金髪メッシュ女子高生アイカのの言う事を聞いていた。


「ってかおじさん、グルじゃないよね?どっかにカメラとか仕込んでるんじゃない?」
 赤いリボン付き薄青色のブラウスを着てやたら短いスカートを履いたダボダボ靴下の足首非サリーちゃん系細身褐色肌隠れ秘密巨乳透けたブラ派手派手な金髪メッシュ女子高生アイカは急に顔を上げて俺に訊いた。

「い、いや知らないよ。知らないって。お、俺もいま起きたばっかだし。って言うか、え?逆にあなたがグルでは?後で金銭を要求されたりするんじゃ?美人局?」
 赤いリボン付き薄青色のブラウスを着てやたら紐パンが見えるくらい短いスカートを履いたダボダボ靴下の足首非サリーちゃん系細身褐色肌隠れ秘密巨乳透けたブラ派手派手な金髪メッシュ女子高生アイカは何度目かの深いため息を吐くと、急に立ち上がって「ったく。しょーがねーからさっさと済ませよっか」と言った。

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