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【短編小説】Water

 歯止めの効かない奈落を転げ落ちていく様だなと思う。
 または突起の無いビルディングが俺の周囲を猛スピードで上昇していくのを眺めているかのどちらかだ。
 いずれにせよ俺の人生はクソったれていると言う事は疑う余地も無く満場一致で採択される。
 大丈夫だよ、それは単なる妄想だ。


「どこいくと」
 女が言う。
 赤子が猫や軟体動物の様に身を捩って乳母車からすり抜ける。
 裸足の赤子はまっすぐ交差点に走っていく。救急車のサイレン。
 俺はエンストを起こしたバイクをキックする。咳き込むエンジン。
 違う、そうじゃない。
 俺が言いたいのは違う事だ、俺の前を横切って車線を跨いだ軽自動車がいて俺はそいつを呪ったんだ。
 だからもう大丈夫。

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