【短編小説】NOスモーキング巌流島
船長はボートを島に近づけると無言でエンジンを切った。
ここで降りろ、と言う事なのだろうか。
しばらく黙って待っていたが船長はパイプに刻み煙草を詰めて火をつけた。
これ以上は何も無さそうだ。
荷物を持って立ち上がるとボートが小さく揺れた。ボートを叩く小さな波の音が聞こえる。
降りると膝まで海につかった。
素足になっておくべきだったな、と思いながら波を蹴る。
砂は固く、足はあまり沈まなかった。
たっぷりと水を吸ったズボンを引きずって砂浜に上がり、倒木に腰かけて煙草を咥えた。
振り向くと乗ってきたボートは既にゆっくりと離れ始めていた。
帰りのボートを打ち合わせていない気もするが、ここで待っていたらそのうち来るだろう。
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