【短編小説】ゴッド宇宙チンボ論
「神を信じますか」
昼過ぎにアパートを訪ねてきた貧乏臭い女は窺うような笑みでおれに訊いた。
外からは通学する生徒たちの嬌声が聞こえる。鳥が囀り、散歩中の犬が柔らかい声で吠えている。バスが重低音で走っていく。
「別に信じてもないが否定もしない」
その女は過去に好きだった女に似ていた。おれが嫌いな男のチンボを夢中になってしゃぶっていた女だ。
「もし良かったらお話をさせていただいてもいいですか?」
女は相変わらず顔色を窺いながら恐る恐る喋っている。
「かまわないが、煙草を吸っても?」
返事を待たずに煙草に火を向けると、煙は女の目を乱暴に撫でた。
あの女も顔に出された時はこんな顔をするんだろうか、と思うと不意に怒張を感じた。
構うことはない。
おれは怒張したまま女に先を促した。
煙に咽せながらパタパタと手で払う姿を見て加虐心が煽られる。
「神はこの世界を作られました」
「知ってるよ、おれの爺さんは恐竜と暮らしてたからな」
「神は……」
女かおれの怒張を見る。話が止まる。
怖いか?こいつもその神が作りし怒張だ。
「神の血はその一滴で全ての人間を救えるらしいな」
だがおれもあんたも神じゃない。
おれたちには神の存在は知覚できない。あまりにも偉大だからな。ミトコンドリアが人間を知覚できないのと同じだ。
「それは……」
女はまだ怒張を見ている。
馬鹿な女だ。後ろを見てみろ。
空が割れて巨大なチンボが降りてきてるのが見えるぞ。
だが女はおれのチンボを凝視していた。
欲情されるのは久しぶりか?そうだな、お前に怒張するのはおれくらいだろう。
「咥えてもいいんだぜ」
女に促す。
空から垂れ下がる巨大なチンボは白人のそれだ。力ないチンボに怒張の気配は無い。
女がゆっくりおれの怒張に顔を近づける。
あの女もこうやって奴らのチンボを咥えたのか?
冗談じゃない。
何もかもが腹立たしい。
「神のチンボはあの程度か?偉大な神のチンボはオゾン層を貫いて地球に顔を見せる程度のサイズなのか?」
おれの怒張をしゃぶる女は聞いていない。
「地球が神のチンボから出る精子のひとつだと言うなら神の存在を信じてやってもいい。お前の教会にだって通ってやる」
それとも何か?
あの垂れ下がる巨大なチンボが怒張して光を放つのか?それとも大量の射精でもって洪水でも引き起こすのか?
貧乏臭い女は丁寧にしゃぶる。
外からは通学する生徒たちの嬌声が聞こえる。鳥が囀り、散歩中の犬が柔らかい声で吠えている。バスが重低音で走っていく。
世界はクソだ。
少なくとも神は信じるに値しない。
おれは怒張を女の口から引き出すと、その顔にぶち撒けた。
「光あれ」
世界はクソだ。
その貧乏臭い女はむかし好きだった女に似ていた。