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【短編小説】バイクNO移植ガール電車亡き女想

 彼女は死にかけている。一度も海を見る事が無いまま。
 2ストロークのバイクはもうすでに40歳近く、酷く揺れる車体は冷却液のバルブを緩めていた。
 オーバーヒートを起こしたエンジンはもしかしたら割れているかも知れない。
 つまり死んでいると言う事だ。
 いや、まだ走るのだから死にかけていると言った方が正確かも知れない。


 人間の脳味噌もオーバーヒートを起こせば二度と元には戻らない。
 昔ニュースで見た。
 熱中症を起こした元人間は酷い姿だった。
 バイクはまだマシだ。パーツを取り換えれば済む。
 そのパーツも、もう40年前のバイクじゃあ揃わないから高くつくが仕方ない。それを覚悟して買ったんだ。 

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