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【短編小説】WINS渋谷ルーザー拳

 絶叫し続けて喉から血が出るかと思った。
 握りしめて皺くちゃになったカードを黄色い自販機に入れた。もしかしたら駄目かも知れないと思ったが、何とか読み取りに成功したようだ。
 俺は向きの不揃いな茶色い札をポケットに捻じ込み、返却された不要な投票券をゴミ箱に捨てた。

 忙しなく吸った煙草は殆ど味を覚えていない。
 何かをしながら食べたプリンの味を覚えていないように、モニターを見ながら吸い終えた煙草を汚れた灰皿スタンドに押し込む。
 灰皿スタンドは既に汚れ切っていて、何なら床にも数本の吸殻が散らばっていた。


 新馬戦だとか未勝利戦だとかのレースは何度見てもわからない。
 血統だとか騎手だとかをいくら眺めていたって馬券は当たりやしない。
 当たりやしないが買わなければ何にもならない。徹夜仕事を終えた後の血走った眼で生卵を乗せた牛丼を飲み込み、競馬新聞の馬柱を睨みつける。
 睨みつけるが、何も分からない。


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