【小説】三千世界レイヴン殺し残響ラヴァーズ朝寝
彼女は死んだ。自殺だった。
父親と同じく飛び込み自殺であった。同じ駅で特急電車に飛び込んだところまで同じだった。だがその死が持つ意味は違った。
彼女の死は誇りの為であり、それ以外の選択肢がなかったからだった。
彼女が最後に何を着ていたのかまでは知らない。
レザーのボンテージと言う正装であったかも知れないし、普段着であったかも知れない。
計画した事なのか、突発的な事だったのかも分からない。だが彼女が誇りの為に死んだと言う事は確かだった。
彼女は飼い犬に手を噛まれた。
文字通り、飼い犬に手を噛まれた。それはつまり関係性の逆転であり、彼女と言う精神的存在の死を意味する。
そしてその狭い世界に於いて、彼女と言う存在にはもう次が無い事を意味している。
後ろ指をさされて生き恥を晒すよりも死を選んで物語を完結させなければなさなかった。
それ以外の道は無かった。
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