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【短編小説】Bonen-改@宇多川動物園B, the完結編
「待ちましょうよ」
何人かが止めに入ってみたものの、アフロと極真は止まらなかった。
プッツン松井も缶ビールを開けて飲み始めた瞬間に、昭和遺産型パワハラ鬼チーフである崎津・3フレ切って・健一がやってきた。
「何をしとんのや」
京都人特有の厭味すらないストレートな怒りは会議室を緊張感で埋め尽くした。
「こう言うのは普通みなが揃うまで待つもんやろ。蹴るぞ。ホームパーティでもしとるのか?俺が来るのも待てんのか?蹴るぞ。え、社会人やって何年?初めての忘年会?蹴るぞ。しょーもない、犬でも言わんで待てるわ。蹴るぞ。ほんまに。アホか。蹴るぞ。蹴るぞ。蹴るぞ」
全自動蹴撃マシンと化した昭和遺産の崎津チーフは段々とボルテージをあげた。
「すみません!俺にやり直しをさせて下さい!」
プッツン松井が今朝の打ち合わせに続いて本日2度目の土下座を披露したが誰もその意味を理解していない。
「日中戦争になったら俺はどこに逃げればいいんですか!」
情緒が行方不明になったプッツン松井はさらに絶叫を続けている。
アフロ斎藤はそんなプッツン松井を尻目に、蹴撃のチーフ崎津の言葉を聞いていたのか黙々とビールを開け続けている。
顔だけはしょんぼりしているが、髭とアフロにはビールの泡がついている。
極真オラつき堀辺マンはアフロが飲んだビールの空き缶を潰してはレーズン福島に無言のアッピールをしているが相手にされない。
堅揚げ原理主義の望月は卓上のナゲットを見つめて「衣がシナシナの唐揚げなんて気持ち悪くて食えない」とブツブツ言っていた。
通知△加藤は400万のそれがバレて嫁から号泣電話がかかってきていたが、スピーカー通話にして大笑いしながら聴いている。
「こんなパーティー、抜けだして寿司でも食べに行こうか」
カラ出張の服部の提案を断る。
「その金もカラ出張で着服したやつですよね」
カラ出張が苦笑いする。
繰り返したカラ出張不倫で居場所を無くした服部が持つこの厚いツラの皮は見習うべきかも知らない。
混沌とし始めた宇多川動物園会議室のドアが開く。
狂気の欠勤キング高橋が降臨した。
「な、何故お前がここに……」
歯痛、抜歯、麻酔の効き過ぎによる体調不良、釘を踏む怪我、化膿、手術、そして麻酔の効き過ぎによる体調不良、それらの結果として出た不眠。
合わせること八週間の休み!!
もはや年内に会う事は無いだろうと思っていた。
そして崎津は目や鼻、口といった身体中の穴と言う穴から怪しい光を発すると徐に顔を巨大化させた。
やがて会議室にいる動物たちをゆっくりと飲み込むと勢いよく爆発した。
そして事務所の瓦礫から唯一生き残った俺が立ち上がり、最初に発した言葉がロックンロールなのさ。
それが波打ち際ブンガクなんだよ。
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