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【超短編小説】生モアイ

 モアイ像の頭部を模したティッシュケースから引き抜いた鼻紙は2枚くっついていた。
 いくら箱が薄型になったところでティッシュはこうしてくっついてくるし、コンドームだって薄くなっても生にはならない。


「大体さぁ、日本人は生に拘り過ぎるんだよ」
 女は布団の上で下腹部を拭いながら言った。
「肉でも魚でもそうだし、お菓子もそう。何ならビールとかワインだってそんなの言うじゃん」
「生ワインってなに?あんの?そんなの」
「コンタクトレンズだって生とか言い出す」 
 女は俺の質問を無視して続けた。


 確かに日本人の生に対する信仰は強く根深い。島国だとか山岳だとか、なんか全体的に土着臭の強い感じがする。
「まぁそうだな」
「熟成とかさぁ、あんまり信じてないでしょ」
「いや食えば旨いとは思うんだよ」
「あと生で食う事の覚悟をできてない」
「まぁそれはそうかも知れない」
 肉にせよ魚にせよ、またはまたは水にせよ、生であると言う事は簡単にトランスできる代わりに死ぬ危険性を伴っている。


「生なんて良いことないのに」
 女は鼻で笑うと、ティッシュを丸めてゴミ箱に放り投げた。
 ティッシュはゴミ箱のフチに当たって外側に落ちた。
 その瞬間、最近の俺は何かを爆発させて無い気がした。俺の世界には爆発が足りない。

 そうだ、生爆発だ。
 俺は女を爆発させた。
 しかし勢いあまって宇宙を巻き込んでしまった。
 宇宙は生なんだろうか。
 考えている途中で眠くなったので、終わりになるだろう。生ってなんだろうな。

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にじむラ
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