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【短編小説】禁煙スピーチ案草稿

どうも皆さん、こんにちは。
禁煙のプロ、紫煙堂フィル太郎です。
寄席ではないのでさっさと本題に入りましょう。
皆さんは煙草をやめたくてここに来ました。
そうですね?
禁煙をした事がある。
そうですね?
そして禁煙に失敗してしまった、しかしまた辞めたい。
そうですね?
煙草をやめたくないのに高い金を払ってセミナーに来る人は、よほどの物好きでしょう。
煙草、やめたいですね。
それなら、やめましょう。
私はこれまでに18回の禁煙に成功しています。
あ、いま誰か笑いましたね。
ハハハ。
落語ではないのに、もう18回も禁煙に成功してる。
おかしいですね。
17回は禁煙に失敗している!
そう思いますか?
頷かれている方、笑っている方……神妙な顔で頷いている方もいますね。
そうです、私は18回の禁煙に成功している。
そしてそれは最初の禁煙以降、失敗した事が無い。
私は自分の意思で禁煙を止め、煙草を吸い、そして禁煙をしました。
全て自分の意志に基づいてやった事です。
コントロールしている。
なし崩しで吸う、惰性で吸う。
それは禁煙の失敗です。
しかし私のは違う。
私は煙草の辞め方をしっている。
禁煙の方法を知っている。
だから煙草を吸ってもすぐに辞められる。
だから断じて禁煙の失敗では無い。
いいですか。
禁煙に失敗はありません。
私はもちろん、あなた達もです。
いいですか。
煙草をやめた。
それはやめようと思ったからです。
煙草を吸った。
それは吸いたいと思ったからです。
いいですか?
禁煙とは煙草を吸わない行為そのものをさします。
煙草を吸いたくなくなる状態を表したものではありません。
煙草を吸っていない状態、それを禁煙と呼びます。
ダイエットに置き換えましょう。
それまでより食べなくなる日常、それがダイエットですよね?
お酒、唐揚げ、スナック、ジュース。
お米、ラーメン、ハンバーガー。
際限なく食べていたそれを控える、ダイエットでしょう。
それらを食べたくなくなる事はまた別です。
煙草だって同じです。
吸わない日々、それが禁煙です。
いいですか。
まず吸いたいと思う自分を許してあげてください。
吸いたいんです。
やめようと思った、それでも吸いたい。
吸っちゃダメなんて事はありません。
吸いたいんです。
今だって吸いたい。
でも吸わない。
そう決めたからです。
ひとは禁止されると余計に魅力を感じてしまうものです。
ビデオ屋にあったピンクの暖簾。
公園にあった禁止行為の立て札。
恩返しにきた鶴。
そうです。
自身に禁止をするから余計に吸いたくなる。
吸いたい時は素直に吸いたいと思いましょう。
吸いたい時は素直に吸いたいと言いましょう。
さぁ、みんなで。
吸いたい!
ほら、みんなで!
吸いたい!
もっと大きな声で!
吸いたい!
吸いたい!
吸いたい!
吸いたい!
吸いたい!
……どうですか?
少しスッキリしませんか?
吸っちゃダメだと思ってた時より、幾分マシな心境じゃないですか?
これで足りなければ、指にエア煙草を挟んで吸ってから、吸いたいと叫びましょう。
大丈夫、あなたはあなたをコントロールできます。
試しに一週間、これを実践してみて下さい。
以前より遥かにラクに禁煙状態が続くはずです。
喉の具合も良くなります。
ご飯の味も良くなります。
お金だって減らない。
もしどうしても煙草を吸いたくなった、そして吸ってしまった時は、禁煙の失敗と自分を責めるのをやめましょう。
単なる禁煙の中止です。
あなたは自分の意思で吸いたいと思い、煙草を買い、火をつけて吸った。
それでいいんです。
そうして飽きたら、また禁煙しましょう。
……え?これですか?
これはそろそろ疲れてきたのでね。
まだ禁煙してますよ、自分自身の意思で吸ってるので。
さぁ、あなた達も禁煙しましょう!

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にじむラ
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