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「お宮さんのひとかい」 後楽園のウインズで煙草を吸っていると、傍にいた見知らぬ老人が話…
地下の倉庫から箱に入ったジュースを持ってエレベーターに乗り込んだ。 旧式のエレベータ…
サスペンションの伸びきったバスに揺られてリトルトーキョーに着いたのは昼前だった。 横…
同僚が転職した。 安定を捨ててどんな仕事に就いたのかと訊けば「芸能人のツイッターをバ…
眠れない。 俺には必殺技が無い事を考えると眠れない。 そうだ、俺には必殺技が無い。 …
怪獣のゴム消しには底の部分に穴があいており、本棚の余ったダボをその穴に詰めて重さを増や…
金曜日の夜と言う事に対して芽生える悦びと言うものがそのまま金曜日の夜のうちに枯れてしまうようになった。 実際に夜更かしと言う行為が悦びではなく、不安と苦痛を伴うようになった。 夜は終るものであり、そのまま朝は苦痛でしかなくなった。濃紺のビロード幕が引かれた空は白い刃で引き裂かれてそのまま光に飲み込まれていく。
靴についていた棘がひとつ取れていた。 高級ブランドにしては作りが甘く、これで棘が落ち…
サウナは戦場だ。闘争領域だ。 我慢大会などと言う生易しいものでは無い。これはれっきと…
「先に始めてていいって言ったのに」 遅れて入ってきた女は両手に幾つもの福袋を抱えていた…
落ちていく最中に気を失う、と言うが嘘だと言う事を知った。 もしかしたら不眠症の人間の…
「遅くなってすみません、家内がうるさくて」 頭を下げながら襖をあけると、先行して席に着…
薄暗い部屋の真ん中には空き缶が山積みになっていた。 恐らく彼はこの缶を開けて開けて開…
「違う、そうじゃないの」 泣きながら言う女を俺はどうする事も出来ずにいた。 「何が違うんだ」 俺は手にした血塗れの釘バットを握り締めた。巻きつけたテーピングはボロボロになっている。釘の先端には衣類や皮膚、頭髪が掛かって風に揺れていた。 「お前が泣いていたから俺がやったんだ、なのに」 女は地面に横たわる白い皮膚の巨大な男の手を取って泣いていた。 俺は釘バットを大きく振りかぶり、泣く女の頭めがけて全力で振り付けた。