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アサナのトリセツ第1回:トリコナーサナ 三角のポーズ 【基本編】

ヨガの実践方法はアサナだけではありません。ポーズが取れることよりも、そのプロセスでの逡巡、そして気づきこそが重要でありパワフルです。

とはいえ、少しでもアサナを洗練させていきたいのが人の常。このコラムでは、基本のポーズの基本のアプローチを、わかりやすく、少しだけマニアックに説明します。

すべてのアサナの原則は「安定していて快適」であること。日常生活では行うことのない不思議な姿勢ばかりのヨガポーズを安定させ快適に行い、そして心身への効果を最大限にするためにはどうしたら良いのかについて解説します。

アラインメントについての説明が多くなりがちなので、アラインメントとは何か、その意義について知りたい方はアサナのトリセツのプロローグでもあるコチラをお読みくださいね。

さて第1回はトリコナーサナトリコナーサナ(Trikonasana)、三角のポーズです。


トリコナーサナとは

日本語名は「三角のポーズ」

サンスクリット語で三角を表す「トリコナ」とアーサナが連音化して「トリコナーサナ」と表記していますが、トリコナアーサナでも別に間違いではありません。

正式名称は「ウッティタ・トリコナーサナ(Utthita Trikonasana)」、ウッティタとは「身体を伸ばす」という意味です。

身体の重みや、他のポーズと混同してしまって膝が緩んでしまいやすいポーズですが、力強く全身を伸ばして行いましょう。そうすると、脇の下や足の間にきれいな三角形が出現します

Benefits【ポーズから得られるもの】

立位のポーズはいずれも下半身の強化に効果的でトリコナーサナも例外ではありません。特に足裏の強化や、股関節の調整に効果大。

正しい姿勢で行えば、体側への効果的なストレッチ、体幹の強化、脊柱回旋によるリフレッシュも期待できます。

では、まずはアサナをとってみましょう。


三角のポーズへのアプローチ

左から右へ。矢印はエネルギーの向き、伸びて伸びて!

①マットの長い縁に向かって立ち、腕を広げたら手首の下に足首が来るように大きく足を開く。
②前脚のつま先をマットの短い側縁に向け、後脚の爪先は前足から見て90°以内になるように整える
③前脚の爪先、膝小僧、骨盤、後脚のかかとは、マットの短い縁と垂直の一直線に配置する
④前側の脇を爪先の方に向かって伸ばす。これ以上いけないところで両腕を床に対して垂直にする。この時、おへそは向かい側の壁に向けたまま。
⑤その場で数呼吸してから、後脚に体重を載せて起き上がり、逆側も同様に。


三角のポーズのポイント

①両足の位置は丁寧に整えよう

立位のアサナの土台は常に足元から。クラスの進行を妨げないようにと急いでしまう気持ちはありがたいのですが、両足のスタンスや配置を疎かにするほど慌てなくても大丈夫です。必ずしっかりと整えてください。

ただ、ビギナーのうちや苦手なポーズの時は、基本のインストラクションが辛いと感じることもあるはずです。例えばこのポーズでも「両手首の下に足首を置く」というのが、結構辛いぞ…という方は結構いるはず。腕って結構長いんですよねえ。

他のアサナにも言えることですが、まずはインストラクション通りにやってみて強い違和感がある時はポーズを緩めてみてください。この場合は「股がさける!」「股関節が痛い!」と思ったら足幅を狭めます。

その時、足幅は少しずつ動かすようにします。軽減するときも深めるときも繊細に行うことで、ぴったりのポジションを通り過ぎるのを防ぎます。

また、ポーズをキープしている間は不動でいなくても構いません。知らない間に足が滑っていることなどもあります。強い違和感があれば調整して下さい。

②両足の位置はどれだけ丁寧に整えてもいい

え、間違い? と思われた方もいらっしゃるかもしれません。でも間違いじゃないんです。先ほど①でお伝えしたのはマットの長いヘリ(解剖学的にはしじょうめん)から見た足のスタンス。今度はマットの長いヘリから見た両足の位置にも気を配ります。

このポーズのように足を前後に大きく開き、かつ胴体をマットの長いヘリ側に向けるポーズでは、前足と後足の関係が実に重要です。

ちなみにマットの短いへりは解剖学的には「前額面」と呼びます

図を見てもらうのが手っ取り早いのですが、以下の2点はマストです。

①踵と踵を結んだラインはマットの前のヘリと垂直
②後脚のつま先が①のラインに対して90度以内

さっきも「必ず」という言葉を使っていましたが、足の置き場については厳しく整えてもらうことが推奨です。

つま先、足首、膝、股関節。日常生活では知らぬ間に結構ねじれているのですが、これらの関節の配列を整えることはそれぞれの関節の不調や障害を防ぎ、股関節や足首の調整にもなるので美容的な面でもやって損はありません。

非常に細かい意識を必要とするので「どうでもいいのでは…」と思う気持ちもわかりますし、やろうと思っても違いがわからない場合もあるかもしれません。とりあえず両足の距離は無理せずに(近すぎてもやりにくいので良きところで)しかし左右の両足の位置関係はそれよりはシビアに整えるのがおすすめです。

③重心の置き方に気を配ってみる

この写真だと左足を重たくして、お尻もそっちに押してほしいの

三角のポーズは身体を倒す側に重心が乗りすぎやすいです。そのため、前脚の膝裏が痛んだり、伸びすぎる不安を感じることがあるかもしれません。これを防ぐためには重心の置き方を考え直す必要があります。

具体的には、後脚の足裏、特に外側にある小指側の縁をマットに重く押しつけるようにします。そのくらいやって、ようやく両足にかかるバランスが整います。

このアサナに限らず足を大きく開くポーズは、どうしてもいずれかの足に重心が偏りがちです。そういうポーズを行う時は、両足に同じだけの体重がかかっている状態を目指すとポーズの安定性が高まりますよ。

姿勢を正すことで土台が強くなると、コアのの強化やバランス能力の向上など、ポーズの効果が身体に反映されやすくなるのでぜひお試しください。

人は顔が向いてない側の身体には割と無頓着な傾向がありますが、アサナを行うときは見えていない身体のパーツをどう使うかを意識して動いてみると新しい発見があるはずです。


④別の角度から見たアサナをイメージする


三角のポーズは、マットの長い辺に向かって行うポーズです。だから長い辺から見たかたちはイメージしやすいのですが、身体は3D。マットの長い辺から見たアラインメントがひとまず整ったら、再び短い辺から見た身体をイメージします。

極端な…と思うかもしれませんが、最初は左みたいになりやすい。
でもラインをひとつにまとめる方法を探ります。そのヒントは⑤で説明しますね

トリコナーサナでは、下半身の安定が確保されていたら、それを保ちつつ胴体は長い辺に向かってできる限り開きます。「おへそは向かい側の壁」や「体側は太ももの上」というインストラクションを聞いたことがあるかもしれません。

でも実は人の身体って思っている以上に腹側が下を向きやすいんです。お腹を下に向けると股関節は真横に倒す時よりも深く曲がるため深いポーズが出来ているような気がしてしまうのですが、上体のアラインメントが正しい位置から外れてしまいます。膝の裏が伸びすぎて痛い、体側が気持ちよく伸びない、上を見上げた時の首に違和感がある等の悩みは、大体「お腹を真横に向ける」ことで概ね解決されてしまいます。

見本のポーズの写真やインストラクターの体側が床と垂直だったとしても(ちなみに垂直じゃないね)、同じところまで倒さなくても大丈夫なんです。身体が床に対して垂直になっていれば、肩や膝に無理な力が入りません。呼吸が苦しい人は無理に顔を天井に向けないで、まずは正面を見るところから始めましょう。


⑤プロップスを利用しよう

下の手を床に置くと身体が下を向くし、身体を倒し切らず手ですねを押すと膝が痛い…。首が上を向かない、苦しい…全部あるあるですね。

ここまでの①〜④のチップスを総合してやってもらうと少し軽減するかもしれません。とは言え、それだけではちょっと大変…という時は、スタジオにヨガブロックがあれば積極的に使ってみてください。

つま先から膝がねじれておらず、まっすぐ。これで安全にハムとふくらはぎがストレッチされます

ブロック以外にもヨガベルトやブランケット、ボルスターなど、ヨガのための道具があります。これらを総称してヨガプロップスと呼びます。プロップスは怪我を防いだり、ポーズを深めたりするのに役立ちます。

ただ人ってつい「実力で」どのくらいできるか試したくなるものです。プロップスなしでどこまで出来るか試したい…愚かだなんて言わないでほしいよね。わたしにもあります、その気持ち。それでもそのチャレンジは一瞬でいいよ、と言わせて下さい。

ポーズのコツ①でも少し触れましたが、やってみて「これは良くない!」と思ったら即オプションに切り替える。つまり、プロップスがあれば使ってみて欲しいのです。

トリコナーサナでは、床側の手の下にブロックを置くのが一般的な利用方法です。ブロックの高さは3通りあるので、これも自分に合わせて調整して下さい。写真では一番高い状態にして使っていますが、ここから始めて「物足りないな」「もっとストレッチしたいな」と思ったら徐々に低くする(負荷を高くする)のが良いでしょう。

身体が硬くて恥ずかしい…という方は多いのですが、周りの人もみんな必死でほぼ他人のことなんか見ていません。

しかし、しつこいようですがポーズの基本は安定性と快適さ息が出来ないようでは筋肉も固まってしまいストレッチ効果が半減してしまいます。それにアサナがどの程度できるかと同じくらい、プロップスの使い方を自分で調整できるってヨガスタジオ内ではクールな振る舞いに映るものなんです。ホント!

最後に

このポーズのコツ、横からと前からとアングル違いで2往復あったことにお気づきでしょうか。自分のイメージより幅広い角度から自分を見つめることは身体的にアサナを深めるためにも役立ち、同時に冷静さや謙虚さを培います。

ヨガを始めてから20年近く経過しちゃいました。それでもわたしはこの基本ポーズに発見があるし、行うたびに新鮮な心地よさを感じています。

どうしてもヨガのイメージって簡単だとか楽だとか、そういう風にしてマーケティングされてきたので先入観で「一発でできる」と思ってしまうのですが実は「一発でできなくてもいい」んですよね。15年以上やっても面白いんだから。

最初から完璧ではなくても、スモールステップを踏んでポーズを洗練させていく。一発でできたらつまんないじゃん、それがヨガの面白さだよね!

どのポーズもそうなんだけど、三角のポーズは何よりその想いを新たにするアサナです。

この記事を書いたのは…
津野千枝(SVAHA YOGA well-being studio ディレクター)
自分軸を育てるヨガをがレッスンテーマ。自分自身の心身に向き合い、学び、育てたい人を応援します。

SVAHA YOGA well-being studio

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