ラフタークレーンさまは六本木ヒルズのペントハウスに住み、仕事が終われば、夜景を眺めながら、ドン・ペリニヨンのシャンパーニュを飲んでいる。
人はAI時代と言うけれど、しかし建築現場の現状は・・・というような話です。
今年の日本は梅雨だというのに晴れの日続きで、今朝の東京はめずらしく雨が降っています。近所の先日壊されたビルの跡地は、すでに新たな基礎工事を終えていて。その前に、大型特殊免許を持ったドライヴァーが、黄色いラフタークレーン(rough terrain crane:足場用荷上げ機)の長い首を伸ばし、路上のトラックの荷台に積まれた建築資材を、作業員がその長い「首」からつり下がったワイアーの先についた鉤に括り、今度はその資材を建築中のビルの工事現場上層階(と言っても9階以下ていどだが)へゆっくり移動させている。向こう側にも作業員がいて、足場を作る作業をおこなっているのだ。
鋼管の支柱をジャッキベースで支え、筋交いに補強し、鋼製の板を乗せ、作業用階段もしつらえ、低層階から順繰りに上層階まで作り上げてゆく。いわば建築作業を進めるための仮設骨組作りである。
この作業の脇の路上では、白いヘルメットに半透明のビニールパーカーを着て、その上に黄色い蛍光ベストを着て、誘導棒を振って、雨のなか交通整理をしている。(ラフタークレーンさまは2000万円以上するゆえ、当然レンタルで工務店は1日6万円だか8万円だか払っていることでしょう。この現場において、ラフタークレーンさまの日当がいちばん高いのはあきらかだ。)
いくら建築家がCADで図面を書くようになろうが、今後土木建築作業にロボットの活用が検討されていようが、しかし、いまのところ現状はこれである。おもえば江戸から昭和にかけての大工は雨が降れば仕事もなしで、風呂に入って酒でも飲んだもの。(もっとも1970年あたりを境に、大工人口は激減してゆくのだけれど。)しかし、21世紀にそんな呑気な贅沢は許されない。進歩進歩と言うけれど、いったい進歩ってなんだろう? いまの日本でいったいどのくらいの人が、ラフタークレーンさまよりも稼いでいるだろう?
ラフタークレーンさまは六本木ヒルズのペントハウスに住み、仕事が終われば、ジャグジーに浸かり、風呂上りには夜景を眺めながら、ドン・ペリニヨンのシャンパーニュを飲んでいる。