納豆売りに変身する魔法少女、アッコちゃん。
かつてコドモ時代のぼくらはみんなアッコちゃんを大好きで、アッコちゃんに会いたくて会いたくて放課後団地の外れまで出てみたのだった。しかしアッコちゃんは来もせず、用もないのに納豆売りが、「は~あ~納豆!」
あの頃ぼくらは愚かにも事の真相を考えもしなかった。しかし、いまにしておもえば、あの日の納豆売りはアッコちゃんがコンパクトの蓋を開け、テクマクマヤコンなる謎の呪文を唱え変身した姿なのだった。ぼくらは長い時差をともなって、いまさらながら息を飲む。それにしても納豆売りに変身する魔法少女アッコちゃん。いったいなんという魔法の活用法だろう? おもえば、後に三島由紀夫を名乗ることになる平岡公威少年は、窓の下をとおる糞尿汲み取り人の青年のもっこりした股間にリビドーを昂らせたものだ。しかし気の毒なことに公威少年は魔法を使えなかった。したがって、公威少年の変身願望は叶えられなかった。では、果たしてアッコちゃんは、納豆売りにいったいどんなリビドーを沸き立たせていただろうか? その答えはねばねばの発酵大豆のようにひそやかに藁に包まれている。
なお、この曲『すきすきソング』の才気あふれる作詞は、『ひょっこりひょうたん島』コンビの山元護久さん&井上ひさしさん。作曲は小林亜星さん。民謡調のお囃子を伴っていながら、ロック寄りのオルガン・ジャズな編曲がかっこいい。オルガン演奏はジャズ・ピアニストの江草啓介さんであるらしい。歌はイラスイトレーターの水森亜土さんによるものである。