太刀魚がイカに行使するサディズムについて。
ぼくは毎朝近所のイオンでなにか安い魚を一尾(たいていは三枚おろしにしてもらって)買って、調理して食べる。きのうは太刀魚が並んでいた。ひさしぶりに見る太刀魚は銀色にぬめり輝き、えらく長かった。たぶんメス。もしも海で泳いでいるとき太刀魚に遭遇したら嫌だろうな。
なお、太刀魚はコドモの頃はプランクトンや蟹などを喰い、イワシやアジを喰う時期を経て、オトナになってからはイカを襲って食べるそうな。タコは知性派ゆえ狙わず、まぬけなイカに狙いを定めるところが狡猾である。襲い掛かってくる太刀魚に、イカは漏斗から墨を吐き出し必死に抵抗するでしょう。イカは冷凍ものはまずいけど、しかしフレッシュなイカはとろっとろな食感でおいしいですものね。ぼくも太刀魚のイカへの欲望がよくわかる。他方、イカは性的に蛋白で、オスのイカは精子の詰まったカプセルをメスのイカに手渡し、メスのイカはそれを外套膜のなかの輸卵管にくっつけるそうな。ちょっとイカが気の毒になります。もっとも、太刀魚とてオスの仕事は放精するだけできわめて間接的で、あとはメスが受精して大量に卵を産むわけだけれど。
ぼくはフランスのエロ小説をおもいだす、裸のブロンド美女を水槽に放ち、水槽のなかの何匹ものタコが裸の美女を襲うという趣向である。葛飾北斎にも『蛸と海女』なるエロ版画がある。(イカはまぬけだから、SMの趣向にはならないでしょう。)興味深いことは、では、サディスティックな女は、美青年をどんな生き物にいたぶらせたいかしらん? やはりタコ???
そんなことを妄想しながらぼくは鮮魚担当者に太刀魚をリングカットしてもらって、部屋へ帰って、軽く焼きつつバルサミコ酢をかけて仕上げ、黒胡椒を振って食べた。ふかふかに仕上がった太刀魚はそれなりにおいしかったものの、ただし小骨が多く、一年に1度食べればいいかな。
時節柄都知事選の話題がかまびすしい。小池百合子さんが太刀魚で、リャンファンさん(蓮舫さん)が台湾産のイカという感じかしらん。余談ながら、豊洲市場の2024年度の経常収支はなんと127億円のマイナスが試算されています。豊洲は三井不動産がこしらえたスマートな街。スマートすぎてぼくにはいくらかつまらないけれど、それでも豊洲には洒落た図書館があって、かっこいいバスターミナルに頻繁にバスが発着する。また、豊洲‐浅草間にはフェリー路線があって1400円である。
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