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日米の仕事の取り組みの違い
仕事の中で『知恵』を働かせた、わかりやすい事例の一つに、品質改善のための活動があります。日本から生まれた「QCサークル活動」やアメリカの「シックスシグマ」などがその代表的なものです。
さて、この活動について、日米で大きな違いがあります。
日本 全員参加を前提
アメリカ 高能力者の活動
この手順や手法を見ると、日本の「QCサークル活動」は「QCストーリー」に従って「QC七つ道具」「新QC七つ道具」などを使って、できるだけ多くの人が、参加して知恵を出し合うようにしています。このツールは、厳密な論理的と思考法と言うより、直感的な納得を大切にしています。つまり、大学などの高等教育をもとめず、皆が参加して考える仕組みです。
一方、アメリカの「シックスシグマ」は、統計的な数値の扱いなど、高度の数学的ツールを使いこなせる、高学力人材の活動です。なお、「シグマ」は、統計で使う「標準偏差」のことです。
さて、両者の利点と欠点を考えてみましょう。特に、現在の私たちは、アメリカ式の経営に、かなり影響を受けています。そこで、まずはアメリカ式の利点欠点を明らかにします。
アメリカ式の高度な学問的ツールを使う手法は、以下の利点があります。
数値による厳密な論理の力で、限界まで性能を引き出せる
リスクも理論的に明らかにし評価できる数値化で微妙な違いが見えるので、良否判定がしやすい
特に微細な改善や成長を評価できる同じ知識を前提にした効率的なコミュニケーションができる
更地に新しいモノを提案するとき、理論的に考えるので動きやすい
一方、欠点は以下の通りです。
理論に乗らないモノへの配慮が無くなる
活動に参加できない者はただ従うだけ
このような発想の違いは、アメリカの物づくりは
18世紀末から19世紀頭の標準化した銃生産の子孫
とみれば、色々なものが見えてきます。現在の私たちは
ネジなどの部品は標準的なもの
と考えています。しかし、18世紀には
ばらばらの部品から10丁の銃を組み立てる
が、素晴らしい成果と見られていました。さて、そのような標準化は、機械による自動化生産と一体で進化していきます。しかも、軍需産業として、政府の介入を受けながら進んでいきました。
軍事的な発想なら
上の命令に従え
も出てきます。特に、機械化に当たっては、それまで腕を振るった
職人の抵抗
がありました。アメリカでは、イギリスやフランスなど、ヨーロッパ大陸と比べて、職人の数は少なかったが、それでも一部には抵抗がありました。これを抑え込み、高度の知識を持った指導者に皆を従わせる。こうした発想が、テイラーの科学的管理法にも引き継がれ、現在の「シックスシグマ」に伝わっています。
さて、日本式の全員参加の利点と欠点を考ましょう。利点は
全員の参加意識で決められたことが確実に行われる
現場対応できめ細かな物づくりとなる
機械のばらつきなども職人的に仕上げる現物対応で理論の見落としが無くなる
です。しかしながら欠点は
新理論の導入に抵抗がある
数値化しないので「見えるレベル」の大きな進歩が必要
があります。
例えば、日本が第2次大戦まで使った「三八式歩兵銃」は、機械加工精度の低レベルを補う、「職人の技」が光り、現在でもマニアの好評価を得ています。しかし、第2次大戦においては、アメリカは自動小銃などを量産化しましたが、日本はそこまでいかず、明治38年採用の三八式歩兵銃頼りでした。このように、今あるモノをきちんとするのは、日本式管理が得意です。しかし新しいモノを創るのは下手です。
両者の利点を生かすためには
理論的知識と現実体験の有機的結合
が大切です。知識を体験と絡めて、説明し活かしていく。そのような力が、新しいもの生み出す知恵になります。