プログラミング未経験から未踏に通り,クマ財団を経験してHCI研究を行うまで
みなさんこんにちは.
北海道大学でHCI研究をしている鈴木湧登と申します.
実は,こういったブログ?みたいな,自分の文章を全世界に公開する行為は論文以外ではこの記事が初めてです.
なんか緊張しますね.
実は,少し前に国内学会のWISS 2023に参加してきました.
ここでは,座位姿勢をMRのコンテンツを通して矯正するGino .Posture(ぎのうどっとぽすちゃー)という論文を発表させていただきました.
WISSは2回目の参加で,前回とても楽しかった思い出があったので,今年もWISSに行こうということで論文を書きました.
WISSにはナイトセッションというイベントがあり,リンク先のプログラムの全体スケジュールのページを見てもらえるとわかるのですが,なんと20:00~24:00の4時間もあります.ここでは,バチクソでかい会場でバチクソ良いお酒を飲みながらWISS参加者とバチクソ交流することができ,バチクソ偉い先生から,バチクソ学部生の子までいろいろな人とお話することができました.
バチクソ楽しかったのでみんな行ってみてね.
ところで,この記事はHCI Advent Calendar 2023の一環として書かせていただいているものです.
WISSに参加されていた荒川さんが主催しているもので,荒川さんと交流した僕の研究室の同期に勧められていま筆を取っています.(僕自身は荒川さんとお話できませんでした...)
WISSで発表していた荒川さんの研究の面白さと研究に関する姿勢,アドベントカレンダーで記事を公開している人たちの凄さに感化され,この記事を書こうと思いました.
といっても,他の皆さんほど有益な情報は提供できそうにありません.
そこで,HCIに興味のあるけど,なにから始めて良いかわからない人のために,僕がどういった経緯でHCI研究を行うことになったのかを記していきたいと思います(主に高校生,学部1,2年生向け).
未踏との出会いと挑戦
まず,僕は北海道大学に入学しました.決め手は都心と大学の距離が近いところです.
そして大学の新歓の時期に部活やサークルを巡るのと同時に気になる研究室にアポイントメントを取って見学をしてたりしました.
これは純粋に大学の研究とはどのようなものかを知りたかったためです.
そこで見学させていただいた研究室の縁で,有志でやっている勉強会に参加させてもらうことになりました.
その勉強会の中にIPAの未踏事業に採択された人がいました.僕はその時未踏について何も知らなかったため,いろいろ調べて,めっちゃすごいじゃん!!ってなりました.同時に楽しそう!!とも思ったので,自分もやってみたいという気持ちになりました.
しかし,しかしですよ,IT人材発掘・育成事業に申し込もうとしているのに学部1年の僕はプログラミングすらやったことありませんでした.僕の両親もITには明るくなかったため,IT技術に馴染みがありませんでした.
せいぜいニコ動とかみてた程度です.
そこで,上記の研究室の未踏に通った先輩に相談させてもらってさまざまな議論をして学部1年の3月に未踏の申請書を書いて提出しました(未踏は年度末の3月中旬が締め切り).
しかし,1次審査で落ちました.
理由は明白で調査不足と実装不足でした.大層なことを言っているくせにプロトタイプがなかったわけですね.それでは通りません.
そこで,今度はプロトタイプを作ってある程度時間をかけて申請書を作成しました.そして学部2年の3月にもう一度チャレンジしました.
しかし,またもや1次審査落ち.
理由は似たようなプロダクトがあり,それとの差異が明確でなかったからです.これでは未踏でもなんでもないですよね.
そこで,今度はしっかり未踏であることを意識しつつプロトタイプを作成して学部3年の3月に未踏に出しました.
この時,僕は大学で合気道をやっており,提案内容は,その合気道の技術を簡単に習得できるようにするMRソフトウェアの開発でした.
結果,被りもなくプロトタイプもできていて,なおかつインパクトがあったので,無事未踏に通りました.
未踏期間中は,合気道の体の感覚を数分で体得できるMRソフトウェアを開発して,成果報告会でデモ付きの発表を行いました.
この辺のお話はこの間STVのラジオで喋ったのでよかったら聞いてね.
クマ財団への採択と藝術表現
その後,このGino .Aikiを事業化しようとしました.
しかし,MRグラスが高すぎてうまくいくビジネスモデルを立てることができませんでした.
未踏が終わってからの数ヶ月いろいろ試行錯誤はしたのですが,最終的には事業化は諦めました.
修士1年の6月,学部4年の3月に申し込んでいたクマ財団の6期生に採択されたという通知がきました.
クマ財団はIT系の人が多くなく,ほとんどが藝術の道を志している人ばかりでした.
僕はこの時Gino .Aikiをどうするかに迷っていた(開発として終わらせるのか,論文にするのか)ので,とりあえず,採択されたクマ財団の同期の人と交流を通して,みんながどのように意思決定をしているのかを調べることにしました.
そうしているうちにアートって面白いなと思うようになっていき,自分でもやってみたいと思うようになりました.
そこで,クマ財団で知り合った人たちと一緒に作品を作ることにしました.
その作品は札幌市の500m美術館に選出されたり,若手の登竜門であるSICF24に選ばれたりもしました.
HCI研究
Gino .Aikiはとりあえず論文にしようということでWISS 2022で発表しました.
その結果,最優秀発表賞と対話発表賞の2つもいただくことができました.
ここで発表して受賞したことで,いろいろな人と議論でき,自分の視野も広がりさまざまな研究者と知り合えました.
この時,論文にして議論するのはとても楽しいと確信しました.
誰とも被っていないアイデアを実装し実験し議論して評価されるのは自分に向いているような気がしたのです.
そこで,本格的にHCI研究を行うことになりました.(ちなみに博士課程への進学を考えたのもこの時期です)
手始めにGino .Aikiを国際論文ISMAR2023に投げました.
半年後,査読結果が来ました.結果的に,Full paperは落とされました.しかし,Poster発表はacceptされたので,この間の10月にシドニーにてGino .Aikiのポスター発表をしてきました(ポスターの前でデモ発表もやりました).
きっともうちょっとしたら論文が出るはずです.
このGino .Aikiでは,比喩表現で運動技能のコツを学習させるというアプローチを取っています.この手法は合気道以外にも使えるのではないかということで,この手法に「Metaphor Reality」という名前をつけて概念化しました.
先述のGino .Postureは実は,このMetaphor Realityの考え方を身体習慣に応用したものです.しかし,評価がpreleminaryなので,やり直してUISTかISMARに投げたいですね.
今は,詳細は言えませんが,新たなGinoシリーズを実装してUISTかISMARを目指しているところです.
来年はMetaphor Realityに関する研究をどしどし行っていきたい所存です.
あと海外インターンとかしたいので,もし良い話があったら教えてください.連絡待ってます.こちらから連絡するかもしれませんが.
おわりに
高校生や学部1,2年生が読むと少しためになるくらいな記事内容で,大方のHCI研究者には微妙な内容だったかもしれませんが,こういう過程をいんたーねっつに流しておくのは価値のあることだと思うので,こういう内容にしました(かくいう僕もいろいろな人から影響を受けているのでもしかしたらこの記事も誰かに影響を及ぼすかもしれない).
未踏の提案書とかクマ財団の提案書とか添削できるので,もし希望する人がいたらTwitterでもインスタでも連絡ください.
あと,共同研究とかしたいので,もし興味のある方がいらっしゃったらお声をかけていただけると幸いです.
それでは!