一日の終わり
「ねえ、抱っこして」
外では周りの目を気にして言わなくなった。
少し歩けるようになっても、ベビーカーを嫌い、抱っこ紐も嫌い、パパの抱っこだけで移動する、そんな娘だった。
幼稚園に通うようになって、ふと気付くと抱っこは求めなくなり、自分でちゃんと歩くようになった。
「ねえ、抱っこして」
1ヶ月前、急に娘が言い出した。
寝る前、トイレを出た後布団に行くまでの数メートル。
寂しさや恐怖でも無い、満面の笑みでこう言う。
「ねえ、抱っこして」
それから数日、トイレから布団までの数メートル、抱っこが日課になった。
娘はその瞬間、おそらく私に向けるその日一番の笑顔を見せる。
数日後
「ねえパパ、おんぶして」
理由は分からないが、抱っこがおんぶに変わった。
娘の表情は分からない。
ただ、声は楽しそうだ。
さらに数日後、娘が聞いてきた。
「ねえパパ、パパは抱っことおんぶどっちが楽(らく)?」
私はこう答えた。
「うーん、どっちもあんまり変わらないけど、おんぶの方が楽かな?」
「じゃあ、おんぶにしよう!!」
娘なりの気遣いなのだろうか。
その日から、まだおんぶは続いている。
1日の終わりの数分、わずか数メートルのおんぶ、あなたは何を感じているのだろうか。
あなたにとって、1日の終わりが楽しみでありますように。
おわり
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