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フランダースな男

拝啓

「最後に会った日から、もう2年ほど経ったけれどお変わりないですか?
突然のお便り、お許しください。
 


あれからきっと、あなたもご苦労があったでしょうけれど、
わたしも当時、何度も気が滅入りそうになることがあったんです。
とにかくいろんなことから逃げ出したくて、
思い立ったある日、ワンボックスカーに積めるだけ荷物を積んで
愛犬のゴールデンレトリバーと共に、北へ走らせました。
 


車をびゅんびゅんと走らせ、
見える景色をぜんぶ後ろ送りにできるのは楽しくて仕方がなかったです。
窓を開けて運転すれば、いやなもの全部、吹き飛ぶ気がして。
時々大声で叫んで、アクセル全開にして進みました。
天気なんて関係ない。
食べるものさえ手に入れば、どうにかその日をやり過ごせるのです。
 

だけど、犬は時々は外へ出して散歩させなければなりません。
疲れた犬が舌をだらりと垂らして、
わたしも昼間は調子良くても夜になると幾ばくかの不安があったものですから
このままネロとパトラッシュよろしく息絶えるのか、と覚悟しました。
 

しかし、そんな心配もすぐに消えたようです。
目の前に広がる山が、空が、晴らしてくれました。
人は、自然を前にしては無力なのです。
都会にいると、あまり思わないかもしれませんが、
大自然を前にすると尚更、実感します。
 

きれいな空気をたくさん吸いこんで、
明日、家に帰ります。
長い家出、ごめんなさい」

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