お帰り
ただいまよりお帰りが好き
門の外燈が付いていない
暗い車庫を抜けると
足元は更に暗くなる
家の灯りが無いと
こんなにも寒いのか
カバンから鍵を探すのも一苦労
小さな鍵は
家を出る時カバンの上に入れたはず
薄暗いポストの前で
毎日同じことの繰り返し
探すときは決まってカバンの下の
反対側に見つかるんだから
こんな日はドアだって
簡単には開かない
ガチャガチャとレバーにあたると
中で猫が鳴いている
玄関マットは暖かい
やっと家に灯りがついて
日常的に戻ってくる
ただいま
お帰り
ずっと独り言
足元にまとわりつく猫が暖かい
お腹を空かせた彼等は
つまかけさせるように
離れない
部屋を暖めて
ご飯を作って
お帰りと言ったあの頃
わたしは貴方に
優しかったかな?
貴方の記憶に優しいわたしが
ちゃんと残ってくれれば
何も言うことはないけど
おかえりなさい
私に言ってくれる人は
いなくて
こんな夜は
余計に一人がさみしいな
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