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King Gnuの名曲から生まれた小説『青の罪人』

「二十歳になったら、死のう」

自らの人生に希望を見出せない青年・祈(いのり)は、二十歳になる誕生日に、この世を去る、と決めていた。

しかし、十九歳の夏――祈の前にひとりの少年が現れた。少年の名は、碧志(あおし)。彼は、ぶっきらぼうな祈のことを何故か気に入り、毎日祈の家に足を運ぶようになる。

 祈と碧志の出会い。それは、孤独だった二人の人生に、それまで訪れることのなかった奇跡と、数々の運命をもたらしてゆく――。

『青の罪人』あとがき

長い長い作品でしたが、最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

この作品は、私の所属するオンラインサロン『かんころ編集部』内での、『好きな音楽と私』というテーマで自由に表現しよう、そんな企画に参加するために生まれた作品です。

……え? 音楽? 物語の中で音楽なんていっさい出てきてないよね?

と、思われた方、はい、そのとおりです。笑

非常に複雑な経緯を経て、この作品は生まれました。よければ、生まれるまでのそのストーリーに、ちらりと耳を傾けてくれればと思います。

(以下、物語のネタバレが含まれますので、未読の方はまず小説をお読みくださいませ。↓)

【この作品が生まれた経緯】

子供の頃から、芸能人やドラマにとにかく疎かったので、流行っている音楽なんかも、未だに、全然詳しくありません。中学生になってようやく嵐のメンバーの顔と名前を覚えたぐらいです。笑

特定のグループやアイドルや、アーティストを好きになったこともほとんどありません。(唯一、武道館ライブを見に行ったことのある三浦大知さんは好きかも)

ただ一方で、アニメは大好きだったので、特定のアーティスト縛りではなく、アニメソングという括りでなら、音楽に疎い自分でも、それなりに語れるんじゃないか、と思いました。そして、じゃあ数多のアニソンの中から、自分の特に好きな曲を何個かピックアップして、それについて語る、そんな内容にしてみよう、そう、決めました。

そこで好きなアニソンを片っ端からリストアップしていたときに、一つの曲が私の目に留まりました。

King Gnuの『Prayer Xという曲です。

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この曲は『BANANA FISH(バナナフィッシュ)』というアニメのエンディング曲として書き下ろされたものです。私は、この曲が本当に本当に大好きで、アニメを見ていても、いつもエンディングは絶対に飛ばしていませんでした。

この曲は、アニメに登場する、孤独な過去を背負うアッシュという青年の人生を風刺したような内容になっています。聴くだけで、アッシュの人生が脳内に蘇り、彼の葛藤や孤独が深く胸に突き刺さってくる、そんな曲です。

……それで、思いつきました。

アッシュというキャラクターから、この『Prayer X』という曲が生まれたのなら

じゃあわたしがこの『Prayer X』から着想を得て、何かキャラクターを生み出せないか、と。

そうして『Prayer X』から生まれたのが、主人公・祈(いのり)です。

ここから『青の罪人』が始まりました。

【名曲7曲に支えられた『青の罪人』】

『Prayer X』を聞きながら、同時に白日も聞くようになりました。King Gnuつながりということで、この2曲を元に、当初は『青の罪人』を作っていこうと思いました。

……ただ、いかんせん『青の罪人』は、長いお話です。完成させるまでのその期間、この2曲だけをずっと聞いていたら私自身も飽きてしまう。

次第に、シーンごとに別々の曲をピックアップして、その都度、思考のチューニングをしながら執筆するようになりました。結果、『青の罪人』は以下の7曲に支えられ、ようやく完成することとなります。

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一曲ずつ紹介していきます。

①King Gnu『Prayer X』

prayは祈る。prayerは祈り、祈る人という意味です。ここからとって彼を『祈』と名付けました。

この曲がアッシュの人生そのものであると同時に、祈の人生そのものでもあります。なので、構成初期、彼のキャラクター性や人格を考えて固めていく際に、かなり重宝していました。

祈の人生の終わり方は、このMVの内容を参考にしました。このMV、実はストーリー仕立てになっているのですが(ぜひちらっとでもいいから見てみてほしいです)

※なお、集合恐怖症の方は閲覧ご注意ください<(_ _)>


〜以下MVネタバレ〜


最後、何故ピアニストは胸に刺された刃物を抜いて、わざわざ自分の頭を銃で撃ち抜いたんだろうと思いました。そんな疑問を、祈の人生の終焉とともに描きました。


②King Gnu『白日』


言わずと知れたKing Gnuの超名曲。初めて聴いたとき、サビの

『へばりついて離れない地続きの今を歩いているんだ』

という歌詞に、本当に小便ちびるんじゃないかってぐらい、衝撃を受けました(笑)人の持つ仄暗い感情をどうしてこうも鮮やかに表現できるんだろう……と。

そんな『白日』は、私にとって『後悔の唄』です。そして、それはそのまま碧志の人生だと作者の私は思っています。主に、夜の海のシーンで碧志の心情を描くときに、この曲を流していました。

③King Gnu『三文小説』


『Prayer X』『白日』と続いて、King Gnuつながりで、YouTubeでこの曲を見つけ、聞くようになりました。

最初にこの曲を聞いたとき、そのあまりの壮大さに圧倒されて、しばらく呆然としてしまいました。たった五分弱ほどの曲なのに、聞いた後は、ものすごい重厚感のある二時間ぐらいの映画を観させられたような感覚に陥りました。あまりの世界観の作り込みにどっぷり浸かってしまい、初めて聴いてから三、四日ほどは、一日中この曲を狂ったように流していました。

そして、よくよく聞いてみると、歌詞はわりと前向き……というか(超簡単に要約すると)歳をとってもずっとあなたのそばにいるよ、という愛の曲なのですが、そんな歌詞とは裏腹に、メロディラインがとても悲壮感漂っていて……その悲壮感や絶望感が、『青の罪人』の物語全体に漂う陰鬱さにマッチしていたので、私の中でこの『三文小説』は『青の罪人』全体のテーマソングでもあります。『青の罪人』執筆期間中は、自分の脳味噌に染み込ませるように毎晩この曲を聴きながら眠りについていました。(私の脳内エンドロールでは、いつもこの曲が流れています。笑)

ライブver.も死ぬほどかっこいいのでみてください(笑)

この動画を初めて見たときは鳥肌がとまらず、その後20回ぐらいずっと聴いてました。笑(「青の罪人」をきっかけに、King Gnuに浸食された日々を送った私です)

④ZONE『secret base 〜君がくれたもの〜』


誰もが知っている夏の名曲ですね。
聞いてみると、イントロからもうやばい(笑)思わず子供の頃を思い返したくなるような、懐かしい気持ちにさせてくれるような……聴くだけで、過去に、タイムスリップした感覚になります。

主に夏祭りのシーンで聴いていました。歌詞にも『10年後の8月』という言葉があったりして、祈と碧志、ほんとうに二人のそのままだなぁ、と思いました。

実はこちら、私の好きなアニソンリストの中にあった一曲です。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』という人気アニメのエンディング曲としてリメイクリリースされています。

あの花ver.↓(原曲もこちらのアレンジもどちらも狂おしいほど好きです)

『あの花』は、高校生に成長した登場人物たちが、小学生の頃の自分たちを振り返り、過去と向き合っていく、というような内容なのでまさにこの曲がピッタリでしかないですね。

⑤FUNKY MONKEY BABYS『あとひとつ』

プールで祈が笑うシーンを描きたかったので、何か爽やかで明るい曲が欲しい!と思いました。ただ、マジでガチで私は音楽の知識が乏しい&そもそもわりと暗めの曲が好きな傾向にあるので、明るい・前向き、というと本当にファンモンぐらいしか思いつかなかったのです。笑(時代を感じますね……w)

で、YouTubeでファンモンを検索し、この曲のイントロを聞いた瞬間ぞわりと鳥肌が立ったので、こちらの曲をチョイスしました。やっぱり名曲って、どれだけ時代が移り変わろうとも、当時の流行と今が違っていようとも、いつ聞いても、ちゃんと、名曲なんですよね。

プールのシーン以外にも、彼らの最後の時間である、8/31の一日を描くときに聴いていました。7曲の中で唯一、根っからの爽やかソングでもあります。

⑥YOASOBI『優しい彗星』

この曲は、アニメ『BEASTARS(ビースターズ)』のエンディング曲として書き下ろされたものです。

このアニメの中で、イブキとルイ、ふたりの男が登場します。彼らは、そもそも全く別の世界で生きていたのですが、ひょんなことから、その人生が交差し、そして最後は別れていく。そんな彼らの出会いから別れを描いた曲なんです。

『無情に響く銃声が夜を引き裂く
 別れの息吹が襲いかかる
 刹那に輝いた無慈悲な流れ星
 祈りはただ届かずに消えた』

この歌詞から、もうこれはまんま祈と碧志やん(笑)と思いました。主に、祈の最期を描くときに聴いていました。

……なぜこうも自分の作品やキャラクターとリンクする曲が、オーダーしているわけでもないのに、この世にちゃんと存在するのか、不思議で不思議で仕方ありません。笑

(余談ですが、BEASTARSはめちゃくちゃ面白いし、キャラクターの一言一言が、とても深くて考えさせられる内容なので、気になった方はぜひ観てみてください!)

⑦平井堅『知らないんでしょ?』

福本のイメージソングです。また、福本と祈が対峙するシーンでも聴いていました。

実は、福本の過去に関しては、全くその内容を考えてきませんでした。いざ、執筆する、というタイミングになったときに、なにか悲惨な感じの曲がいいなー、人の醜い感情が浮き彫りになるような曲はないかしら? と思って、この『知らないんでしょ?』をチョイスし、狂ったようにリピート再生しながら、その場で思いつくままを書いていきました。

彼の母親は非常にヒステリックな性格ですが、これも『知らないんでしょ?』を聴いた自分のインスピレーションで出来上がりました。……むしろこれは福本の母のテーマソングかもしれません。実際、MVもかなりホラー気質なので、私の解釈はあながち間違っていないんじゃないかなと思います(笑)

曲の冒頭、ガラスがパリンと割れるような音から始まるのですが、心の何かが限界を超えて割れてしまった――そんな、精神の闇を感じさせるような始まり方で、やっぱり作曲できる方って、すごいなぁ、と、しみじみ感じました。

ちなみに私はこの『知らないんでしょ?』と合わせて、平井堅さんの『ノンフィクション』も大好きです。どちらもとても重たい曲ですが、心臓を真正面から突き刺してくるような感じがして、深く深く、その歌詞と音楽で自分を傷つけてくる感じがあって、どうしても聴くのをやめられません。


……余談ですが、音楽というテーマを出され、本当は『ノンフィクション』について語ろうかな、と思っていたぐらい、『ノンフィクション』は私にとって思い出深い曲です。聞くたびに、どうしようもなく、心を揺さぶられ、どうしても、涙を、堪えることができません。けれどその思い出はあまりに私にとって、深く、深く、心の底に根付いて宿っているものだったので、これは他人の目に触れさせるべきではない、自分の中でひっそりと持っておくものだ、と思ったので、やめました。

話を戻します。

今回、こういう形でたくさんの曲を『青の罪人』に取り込みながら、作品を完成させました。

このうちどれかが一つでも欠けていたら、この作品は今の形では出来上がっていません。アーティストの皆様、そして『音楽』というテーマで課題を出してくださったかんころ編集部の運営の皆様、心の底からありがとうございます。

改めて、ほんとうに改めて、音楽の力って、すごいなぁ、と。音楽を生み出し、声や楽器でそれを伝えていくこと。それは本当に、誰にでもできることじゃなくて、このたった一曲、たった数分の音楽を作り上げるために、どれだけ多くのバックボーンや知識や経験が詰め込まれているのだろう、そしてそれらを抽出していく力を世のアーティストの方々はきちんと養っているのだなぁ、としみじみ感動しました。世の音楽に携わるすべての人を尊敬します。

……さて、あと他にも色々とこの物語に対して書き残しておきたいことはありますが、一旦ここで区切らせていただきます。そうでないと、死ぬほど長くなってしまうので。笑

次の記事では『そもそもあのラストは最初から決まっていたものなのか?』ということや、わたしなりのキャラクターたちに対しての思い、作中に書ききれなかった裏設定などを、お話していこうと思います。気になる方はぜひ、どうぞ↓

長い長い物語に加え、このあとがきを最後まで読んで下さり、ありがとうございます。心の底から感謝を込めて。 すずちん(千寿)

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