発狂頭巾敗れたり!お前の剛剣に二の太刀なし!
風になびくススキの原。ここは町外れ、眺めるものは月しかいない。だが匕首を子供の首に突きつける男がいた。
「よく来たな発狂頭巾、いや吉貝。流石のお前も自分の子が人質に取られちゃ従うしかないか?」
匕首使いのヤスは少女のやわらかな肌に刃を押し当て、動かぬ発狂頭巾をニヤニヤしながら見続けた。
「うう……助けて」
少女は弱々しい声で嘆く。父に会えるかもしれないと来てしまったばっかりにこの有様。だが目の前にいる人は父かもしれない。父にあう夢がかなうかもしれない。微かな希望