スマホとの距離感
もう今夜はスマホは触るまいと思い、まだ20時だけどスマホを充電ケーブルに繋いで枕元に置いた。
その隣の作業机で日記でも書こうと思い手帳を取り出すと早速「ピロン」という通知音が鳴った。こんな時間に誰かLINEだろうか。さっき封印したばかりのスマホの様子を見に行くとLINEの通知が来ていて、「スターバックス・JINSほかから通知が来ています」という内容。要するに誰から連絡が来ていたわけでもなく、ただスマホが「そろそろLINEを確認したら?」と知らせてくれたのだった。
これは本当に恐ろしいと思い、同時に腹が立った。人から連絡が来たから通知が鳴るのであって、定期的にSNSをチェックする義理はこちら側にはないのだ。でも結局のところ、数分でまたスマホに舞い戻ってしまった自分がそこにはいた。全く、どうしたらいいのやら。
デザイナーとして働いている。
なんとなくお察しの通り、デザイナーの労働環境はブラックになりがちだ。僕たちはアーティストではないので、何か画期的な何か」を0→1で思いついてそれを差し出しておしまいという仕事ではない。(そんな仕事はそもそも存在しない)
デザイナーが仕事を受ける以上、そこにはクライアントがいる。
そしてクライアントには要望がある。あんなふうにしたい、こんなデザインにしたいという具体的な、あるいは抽象的な要望だ。
そしてその要望は毎日のように変化する。「でっかい写真を一枚ドーンと見せたいんです!」と言っていた翌日には「役員の意向で小さい写真をたくさん展示することになりまして…」という話になる。
そしてそういうクライアントは9時から18時までに連絡をくれるわけではなく、20時とか23時でも平気で連絡を寄越してくる。デザイナーになりたてのころはびっくりしていたけれど、今でもびっくりする。最近はデザイナーも10年続けているので割と図太くなってきて、電話を取りながら「えっちなみに今何時だと思います?」と言ってしまったりするけれど。
要するにこの職業は仕事をしようと思えば24時間仕事をすることができる。いつも何かしら修正の要望が来ていて、それを無視しないと帰ることができない。どこかで線引きして、自分の聖域の時間を自分に対して用意してあげなければならないのだ。
僕は最近は自宅に帰ったらそれ以降はスマホを「おやすみモード」にして、誰からの連絡にも出ないようにしている。もちろんたまにスマホを触ったりはするので、そのときに早めに連絡を返すことはあるし、僕は空間デザイナーなので施工期間だったりすればそれこそスマホが手放せないこともある
(現場で寸法が違ったとか、違うデータが納品されているとか)
自宅は通知音が鳴らない世界だ。
そういう環境は自身で作り出さないといけない。こういった自衛方法は本当に最近学んだことだ。それまではずっと応対していた。ただその応対で顧客満足が向上したのか。正直ずっと疑問だったのだ。
夜でも構わず応対すればそのときはクライアントは助かるだろうが、結局のところ長い目で見れば「あのデザイナーは夜でも作業してくれるから夜連絡すればいいや」という意識をクライアントの中で醸成することになり、夜に無理して応対すればするほど夜に連絡が来るようになる。
フリーランスならまだしも、会社員なのだから無理して全て受け切る必要はないのだと思った。こちらが潰れてしまっては元も子もないし、そもそも僕はプライベートの時間を大切にしている。(そしてこれから入る新人も含めて若い世代もまたプライベート大切にしているのだ)
脱成長とまでは言わないまでも、幸いサラリーマンは労働時間が定められているので、デザイナーの立場上残業が続いたり、なかなか帰れない状況が確定的にある分、むしろそうでない日は思い切って定時で帰りまくって、その分美しいものを網膜に焼き付けたり、自分の好きなことに時間を使って労働者としての自分を再生させるのだ。
とにかくその手始めとして、スマホと関わる時間を決めて、手放さなければならない。すべてはその線引きから始まると思っている。
iPhoneのおやすみモード、おすすめです。
今日はここまで