ミツバチが聞いたもの
今週の「こころの時代」
丁度ウクライナのニコライ「灰色のミツバチ」を読んでいますが、主人公はドンバス地方の養蜂家です。ドンバス舞台の頃は冬~春にかけての白黒の風景に思えましたが、その後クリミア半島まで蜂を連れて旅をします。何となくずいぶん遠くまでとは思いますが、マップで見ると800キロくらいですから広島-東京くらいの感じ。もちろんミツバチの巣箱をトレーラーに積んでの移動ですから、時間はかかりますが。知ることのあまりなかったロードノベルでした。
主人公はロシアでもウクライナでもない中間のグレーゾーンに住んでいますので、ロシアからもウクライナからも厳しく扱われます。しかし、クリミアに住むタタール人の養蜂家族はさらに厳しい状況であることも書いていました。
ドンバスは戦地だし、冬の風景を描いているので、どんなところかよくわからなかったのですが、スベトラーナ・アレクシエービッチ氏の生まれ育った所が、ベラルーシのウクライナとの国境近くのチェルノブイリの汚染地区でしたのでキーウの北方ですが、ウクライナ東部のドンバス地方とそれほど違わない風景なのかな。画面では放射線汚染地域に戻って暮らす農家や風景が映りました。
ああこんな感じの風景なのか、「灰色のミツバチ」はウクライナとロシアの激戦地なのでもはやこのような風景は失われているのでしょうが…。
丁度NHKで「ドライブ in ウクライナ」の再放送と新作をやっています。この「灰色」の主人公の進んだルートは今はロシア制圧下なので通ることはないのでしょう。
さて、「こころの時代」の番組でチェルノブイリ事故の放射線被害について、スベトラーナ氏が話をされた中で
「社会的存在としての人間は世の中のヒエラルヒーを頼しがちです。お偉いさんが言う事を、例えば首相が私たちのところでは書記長が『コントロールしている』と言う。でも事故直後被災地にいた ハチミツ農家はなぜミツバチが、10日間も巣から姿を現さないか分からなかった。ミツバチは、人間には聞こえない何かを聞いていたのです。しかし同じ時 人間の子供たちはサッカーをしていた。政府が『アンダーコントロール』と言っていたから、でもそのコントロールとは一体何か?」
あっ「ミツバチ」と思いました。
「灰色のミツバチ」では主人公が冬の間巣ごもりをしているミツバチの巣箱の上で寝る話が出ていました。それによると厳冬の期間もミツバチは身を寄せ合って37度の温度を維持しており、またその蜂の振動で、箱の上で横になっていると体も良くなるとか。雪で覆われ、氷で閉ざされる時期人間はストーブに石炭を入れ続けないと生きていけませんが、ミツバチは寄り添ってしのぐ。スベトラーナ氏の「人間には聞こえない何かを聞く」だけでなく、「人間では及びもつかないお互いの生命維持力」をミツバチは持っているのだと思いながら読みました。
またウクライナと言えば名画「ひまわり」。「灰色のミツバチ」でもクリミア半島からドンバスに戻る途中、夢でひまわり畑があらわれます。
ところで、ウクライナではなくオーストラリアの話でしたが、ETVの「ドキュランドへようこそ▽幸せのひまわり畑~オーストラリアある夫婦の物語~」は「ひまわり」でした。
まちおこしとして「ひまわり」があり、それに反対する地域住民や、干ばつの反対に豪雨で大変な試練も受けつつ、という話でした。
ウクライナのひまわり畑はどうなっているのでしょうか。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?