たくさんの一人きりの時間を重ねて、
夜の淵ひとりに慣れしこの心強きとも言え弱きとも言え
(YORU NO HUCHI HITORI NI NARESHI KONO KOKORO TSUYOKI TOMO IE YOWAKI TOMO IE)
一人暮らしが長くなったので、一人の夜が日常になった。
一人暮らしの初めの頃は急に淋しくなったり実家が恋しくなったりしていたのに、もうすっかり慣れっこになっている。
あの頃は、一人でいるのがイレギュラーのような出来事で、それは明らかに不自然な状態だった。
狭いワンルームのどこを見ても誰もいない。
お茶をこぼしてもお皿を割っても、ただ一人きり。
一人分のご飯を作って、一人で食べる。
たくさんの一人きりの時間を重ねて、いつしかそれは
当たり前になった。
だからもう淋しくて泣いたりしないし、
ホームシックもほとんどない。
強くなったなあ。素直にそう思う。
けれども同時に、もうこの先誰かと一緒に暮らすことは
できないとも思う。
一人は心地いい。
生活の中に気遣ってくれる誰かがいない代わりに、自分が誰かに遠慮をしたり必要以上に気を遣って疲れることもない。
それは人と関わることで発生する煩わしさへの
耐性が弱くなったことでもあるだろう。
一人の快適さを嚙みしめながら、それでも少しだけ
淋しい気持ちで、自分のためだけにご飯をよそった。
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読んでくださって、どうもありがとうございます**
きらめく50音の中から掬い上げた31文字が、
あなたに届くとうれしいです。
今日も明日も、あなたの毎日が素敵な日々でありますように。
あなたの人生と世界が、優しいものでありますように。
すずき春