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遠いはずのそのすべてが、

言の葉の美しさ知るいにしえの歌を心に刻む夕刻
(KOTONOHA NO UTSUKUSHISA SHIRU INISHIE NO UTA WO KOKORO NI KIZAMU YUUKOKU)

夕方の空は境界が曖昧な感じがして、一日のうちで
いちばん優しい。

だから帰りのバスを待ちながら和歌を眺めるのは、
とても幸せな時間だ。

さらさらの風が心地よくて、花と葉っぱの香りも穏やかで、歌がゆったりと心に入ってくる。

ずっと昔のこの国に生きていた人たちの気持ち、感覚、
彼らが目にした情景。

遠いはずのそのすべてが、ちゃんと言葉で今と繋がって
いる。

でもやっぱり、圧倒的。

かつての言葉たちが持っていた風情や美しさは、今のそれ
とはだいぶ違う。

今には今の良さがもちろんあるけれど、言葉を大切に扱い、育ててきた時間の重みが本から伝わってくる。

自分が大切にしてきたものを後の世の人が丁寧に受け取ってくれたなら、それはきっとうれしいことなのだろうと思う。

大丈夫です、時間を超えて伝わってます。

届かないかもしれないけれど、心の中でそっと言ってみる。

バスが来た。

本を閉じて胸に抱き、静かにバスに乗り込んだ。


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すずき春
読んでくださって、どうもありがとうございます** きらめく50音の中から掬い上げた31文字が、 あなたに届くとうれしいです。 今日も明日も、あなたの毎日が素敵な日々でありますように。 あなたの人生と世界が、優しいものでありますように。 すずき春