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#324 老いて華やぐ

汝、我が道を歩め
人をしてその言うところに任せよ

「人がとやかく言うことは気にせず自分の信じた道を歩め」ということらしい。

言いたいヤツには言わせておけ」というとことだろう。

キーワード検索してみると、仏教をはじめいくつもの宗教に似たような考え方がある。

『鬼滅の刃』のキーパーソンの一人である煉獄れんごく杏寿郎きょうじゅろうも数々の言葉をクールにキメている。
煉獄という名前そのものがすでにアレなんで・・・・

学生達も古めかしい言葉をよく知っているが、漫画・アニメから学んでいるようだ。

源流がどこであれ、世界中の思想がどこかで交わりハイブリッド化して語り継がれてきたのだろう。

その言葉の中に真理が宿っているのであれば、それを大切にしたいと思うのである。

学生たちに伝えていることがある。

あなたも、わたしも、自分が使った言葉でできている。
どんな言葉を紡いできたかによって心が決まる。
悪口やネガティブワードを吐けば、すべて自分に返ってくる。

京都のお西さん(浄土真宗本願寺派)の説法で心に刻んだ親鸞聖人の言葉も大切にしたいと思っている。

悪しき心を賢しく省みず


60代も半ばにさしかかかり心身ともに老いを感じる。
もう登山はやめたので、毎日7階の研究室を上り下りしている。

エレベーターを使って教室へ行こうとしているラグビー部や柔道部の学生に「おい!階段で行くぞ!!」と声をかけて疎まれている。
朝練でヘトヘトなのだろう。
油断すると授業中に舟をこぎ出す者も出てくるので、耳元でそっと「おはよう」と囁いたりもしている。

これだからジジイは嫌われるのか。

老いてゆく悲しみは増えるばかり。

岡本かの子(大正・昭和期の小説家)の『老妓抄』の最後に、年老いた芸妓が詠んだ和歌がある。

年々に わが悲しみは深くして
 いよよ華やぐ いのちなりけり

老いていく人生、何に命を傾けるのか、どこにエネルギーを注ぐのか、物語と共にこの歌が、心にずしっとくるのである。

限られた人生だ、我が道を歩みたい。

「人をしてその言うところに任せよ」

「いいたい奴には言わせておけ」

しかし、耳を傾けることも大切だ。

境地には到達できないチンパンジー先生である。

HSP(highly sensitive person、HSP-繊細さん)じゃなくても、どうしたって人の言葉は気になるものだ。

仏教を研究していた岡本かの子は、親鸞聖人の教えから「老いて華やぐいのち」の歓びをいただいたという。

人は自分の人生を歩む以外にどうすることもできないのだから、やがて老いと向き合わなければならない。

京都大学野生動物研究センターの研究によると、チンパンジーの平均寿命は28.3歳(雄が30.3歳,雌が26.3歳)だそうだ。

ということは、チンパンジーとしての私の年齢は突出しているぞ!

ありがたいことだ。

恩送りの人生である。
老いてなお華やぐことをめざそうではないか。