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#383 そこに覚悟はあるのか

 1年次の履修を終えた学生が私と面談したいと研究室にやって来た。

 私が課外で運営している教員志望者向けの「鬼も逃げ出す『終点道場』(別名:けーわん  わくわくワンダーランド)」に加入してトレーニングを受けたいという。

「かなり厳しい道場だと聞いたんですが本当ですか?」

「脱落者が結構出るんだよね。あまりにも過酷なので私も教室を飛び出すことがあるんだ」

「えっ!先生も逃げ出すんですか?」

「たまに居眠りしている学生がいるんだよ。
そういうのを見ると机を蹴飛ばしたくなる衝動にかられるんだけど、グッと堪えて教室を出るんだ。落ち着け、落ち着け自分!って呪文を唱えるために」

「その後、どうされるんですか?」

「頭を冷やして教室に戻って、「起きろー!」って叫ぶ(笑)」

「僕は居眠りしたことないです。」

「そうか、それは偉い・・・・というか当たり前だよね。真剣勝負なんだもん。
採用試験対策も教えるけど、教師である前に人としてどうあるべきかを学ぶ道場なんだ。
本気でやるべき時にやれない人は去ってもらうしかない。」

「でも、それに耐えた人はみんな採用試験に受かっているんですよね。」

「そう、叱るときは、「めっ!ちゃんと勉強しなきゃダメだぞ、プンプン!”」って。」

「ウケますね~、あっ、いえ失礼しました。ちょっと可笑しくて、スミマセン。」

「まあ、楽しく伸び伸びと、でもやるときは真剣にやる。
本気で頑張る人を応援するのが私の役目だからね。
困りごとがあれば相談にものるよ。」

「入るための条件はありますか?」

「GPA(成績指標値)が第一条件。
教員を目指す以上は、A(優秀)かAA(最優秀)を取っておきたいよね。
教育は知識だけじゃない。
でも、教科指導と生徒指導の知識・技術はマスト。
数学の絶対値ってわかる?
ゼロを基点にしてアレするやつ(どれだ!)
生徒が何も知らないところから学び始めるとしたら原点はゼロだよね。
3とか4程度のことを教えるにしても、教師はゼロの位置から見た絶対値100の所にいなきゃいけない。
学習の全体像と細かな構造を見通したうえで教えるための総合力が必要なんだよ」

「なんか難しそうですね・・・・」

「まだ1年生で19歳だろう?これからこれから!
しかも、教師になってから学生時代の何倍も学ばなきゃいけない。
手持ちの資源なんてすぐに枯渇しちゃうから」

「そうなんですか・・・・でも、ボク一生懸命やります!」

「教育大じゃない一般大学では教職課程の単位は卒業単位にカウントされないから、それなりの覚悟がないとね。
教員免許そのものは真面目にやっていれば誰でも取得できるけど、採用試験に受からなければいけないし、現場では子どもが好きとか教えることが好きというレベルじゃ通用しない。
「好き」の中には「嫌い」になる要素がたくさん潜んでいるもんだよ。
感情労働に分類される教師は子ども達の困りや諸問題に寄り添いながら、辛いことも込みで飯を食っていく仕事だから覚悟を持って挑んでほしいな。
道場の申込みは4月だから、それまでよーく考えておいて」

「ありがとございました!」

「いや、私も自分で話していて勉強になったよ。ありがとう」

昨年12月講演会
『教師の生き方、あり方』
ー Z世代との向き合い方 ー