#352 セルフマインドコントロールの達人
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■モノローグ(ひとり語り)の罠
学生との後期面談(後半戦)も佳境を迎えつつある。担当している20名との面談延べ数が100件を超えた。
当初は自分のメンタルがやられるのではないかと不安だったが、私のメンタルはメタルでできているので案外強い。
心の中で自分との会話が始まる。
君はよく頑張っているよ
ありがとうチンパンジーの僕
おそらく面談を重ねていくうちに、学生個々の特性を把握できるようになり、その日の表情や声のトーンで心理状態を推測しながらスムーズに対応できているのだろう(そう思いたい)
君の勘が研ぎ澄まされてきたんだよ
うん、そうだねチンパンジーの俺
新年度になれば振り出しに戻って、また新入生との面談が一から始まる。
研ぎ澄まされつつあった野生の勘がリセットされ、また出会ったことのないタイプの学生と向き合い、手探りの1年間に四苦八苦するのだろう(そうならないことを願っている)
コーチングやカウンセリングの師匠のもとで助言を受けながら自分も成長したのだろう。
でも、「オイラも腕を上げたもんだな」と思った途端に失敗する。
さすが君は失敗と挫折の専門家だね
それほどでもないよチンパンジーの僕
単なるお調子者か。
学生が日々経験する成功や失敗に共感し共に泣き笑いすることもあれば、受け入れ難い言動に触れると、ちょっとイラっとしてしまうことがある。
面談が終了するたびに一人反省会をしている。
面談メモに付けた○印はいいとして、△やXが付いた部分は修正点として次に活かすようにしている。
通常の講義も教育相談も自己の至らなさを痛感する毎日がエブリデーだ。
ちょっと、何言っているかわかんない
うん、チンパンジーの私だから
信頼関係づくりは難しい。
ときどき教師やチンパンジー先生という肩書きが邪魔くさくなる。
■セルフトークの人称を変えてみる
私たちは脳内で1日に数万回ものセルフトーク(自己対話)をしていると言われている。
自己批判の多いセルフトークはストレス反応を起こしやすいことは臨床実験によって明らかにされている。
自分が今どんなセルフトークをしているのかに気付けば、ストレスの進行にブレーキをかけられる。
ネガティブワード(悪魔)払いだ。エクソシストってことだな。
コーチやカウンセラーはそのお手伝いをする一方でセルフマインドコントロールもしなければならない。
メンターは四六時中私に寄り添ってくれているわけではないから、私は自分で自分の心の立て直しを図らなければならない。
その際のセルフトークは「わたし、ぼく、おれ、おいら、あたい」といった一人称ではなく、二人称、三人称に置き換えるのがよいそうだ。
◆「僕、大丈夫かな」
「君は丈夫だよ」
「彼はこの困難を乗り越えられるよ」
◆「オイラ、やっちまったなあ」
「あなたは一生懸命やった。必ず報われるよ」
「彼に罪はない。気持ちを切り替えよう」
自分にベッタリじゃなく、自分と距離を取ることが大切なんだろう。
モノローグ(ひとり語り)はノイズがない分、じっくり考えることができるが、視野が狭く独善的になりやすいので、ネガティブな自分の沼にはまっていく怖さがある。
ダイアローグ(他者との対話)は傾聴の姿勢が必要だが、共感、相互理解の能力や他者と折り合いをつける調整力も高まるので、これが身に付けばポジティブになれる。
そうだ、目が覚めた瞬間から脳内セルフトークは「僕・俺」を主語にせず、「君」や「彼」を招待して会話することにしよう。
嫌なことはそいつに押しつければいい。
えっ、そういうことじゃない?