その視点で来るか!の歴史漫画
歴史漫画というと、織田信長が筆頭だけど偉人がどう生きたかというのを作者の解釈を交えて描く作品も多い。そんな中、大胆な解釈を、それこそ教科書にはまず載っていないような視点で描いた作品もあって、それがめちゃめちゃ面白いので紹介したい!!
『イサック』侍が中世ヨーロッパで躍動する!
2つの勢力に別れ、後に30年戦争と呼ばれる激しい戦いの最中にあった17世紀の神聖ローマ帝国。そこに傭兵として現れたのは「イサック」と名乗る日本人の男! 遠く日本を離れ、ヨーロッパ大陸までやってきたイサックの目的とは!? 彼の壮絶な戦いが始まる!! 『勇午』の真刈信二氏と『死がふたりを分かつまで』のDOUBLE-S氏の新タッグがおくる、骨太エンターテイメント!
いきなり世界史に飛び出してしまうのだけれど。戦国時代が終わった頃に、江戸時代に日本を飛び出してヨーロッパで傭兵となった侍がいた!それだけでワクワクしない?1600年代前半にヨーロッパで起こった30年戦争を舞台に日本からやってきた侍躍動する。剣士として活躍するのかと思ったらスナイパーという意外性。でも、ご安心を。日本刀を抜いてもめちゃくちゃ強い。にしても、一体なぜそこに侍が??日本でのある出来事をきっかけにある人物を追ってきたということもわかってきて、ストーリーも重厚。中世のヨーロッパでの戦争を日本人が活躍していたという思いもよらない視点から描く一大歴史ロマン。(ちなみに、この時代に日本人がヨーロッパで傭兵をやっていたというのはどうやら本当らしい)
『雪花の虎』上杉謙信は美しき女性だった!?
戦国の世を、義を貫いて駆け抜けた軍神・上杉謙信。
毘沙門天の化身とされる名将中の名将は、実は、女だった―――
時は享禄二年、1529年。
越後の春日山城城主・長尾為景の第3子が誕生する。
不甲斐ない嫡男・晴景に代わる後継ぎとして期待された赤子は、
しかし女児だった。失望する為景だったが、すぐに決意を新たにする。
「この子を、姫武将として育てる」「名を虎千代とする」と――強い父、やさしい母、穏やかな兄、健気な姉に囲まれ、小さな山城でお転婆に育つ虎千代。
その双肩に背負う運命の重さを、未だ知るよしもなく……。
東村アキコが挑む本格大河ロマン、
越後の虎、女・上杉謙信の一代記がいま、始まる!!
東村先生が有名すぎて、紹介するまでもないかと思ったが、やっぱり外せない。上杉謙信女性説というのは以前からなんとなく聞いたことはあった。それを東村先生が丁寧に取材して、マンガという形でこの世に生み出してくださいました。女性ならではの視点で、女武将を描く。それもあの東村アキコ先生が、ですよ。それだけで間違いないでしょう。
「彼女」は何を思い、誰を想い、そんな人生を歩んだのか。ライバル武田信玄ももちろん登場。これまた、いままでの「ごついオジサン」のイメージを覆す優男に描かれていて初めて見たときはちょっとびっくり。信玄との戦いがどう描かれていくのかも楽しみ!!
今は私も上杉謙信女性説を信じています。
『ハーン ‐草と鉄と羊‐』生き延びた源義経はモンゴルに渡っていた!
蝦夷地に住んでいた源義経は、兄・頼朝から追われていた。船に乗り込んで逃げようとしたが、その船は難破、着いた先はだだっ広い大陸。彼は復讐に囚われた人生を捨て、新たに生きることを決意した。裸一貫! 土地、人種、しがらみ。義経はすべてを飛び越え、曲者だらけのユーラシア大陸を駆け廻る! そして人類史最大の支配者になることができるのか!?
チンギス・ハンが実は生き延びて大陸に渡った源義経だった説、をベースとした作品。
兄・頼朝から追われて流れ着いた先は、様々な民族が覇権を争う群雄割拠のモンゴルだった。一人の漂流者から一転、持ち前の知略で異国の地を駆け上っていく。
にしても、この義経、自分の欲望と野望に清々しいほどに真っすぐで、既存の義経の悲劇のヒーローというイメージを思いきり覆す。思い切った義経像が楽しい。
モンゴル帝国は後(チンギス・ハンの孫のフビライ・ハンの時代)に日本に攻めてきて元寇という歴史的大事件を起こすわけだが、その歴史は日本人は案外知らないと思うし、その点でも興味深い。
『アンゴルモア 元寇合戦記』モンゴル帝国と対馬の島民たちの激闘を描く。
中世ヨーロッパを席巻し、恐怖の大王=アンゴルモアの語源との説もあるモンゴル軍。1274年、彼らは遂に日本にやって来た!博多への針路に浮かぶ対馬。流人である鎌倉武士・朽井迅三郎は、ここで元軍と対峙する!
蒙古襲来こと、「元寇」は歴史の教科書にも載っているし、聞いたことがあると思う。神風が吹いたのはこの時。でも、教科書には「北条時宗の時代に元が二度にわたって襲来した」とさらりと書かれているだけだったりする。主に教科書に書かれているのは九州が襲われたことだが、本作はその直前、対馬に侵攻してきた元軍vs島民・流人たちの激闘が描かれる。ん?流人??そう、主人公の朽井迅三郎は罪人として対馬に流されてきた鎌倉武士。これが強い、めちゃくちゃ強い。
ただ、誰もが知るような有名人はいない。史実に基づいていながら、主人公は名もなき人々だし、舞台は博多ではなく対馬だ。本作を読んだ後、自分があまりにも知らなかったことに驚愕した。このような激闘が本当にあったことを多くの人に知ってほしい。今も残る対馬の遺構には絶対にまた行きたい。(現在、本作の続編の「博多編」が連載中!)