【ネタバレあり】ワンダーエッグ・プライオリティ 第10話 感想
はじめに
ネタバレありです。視聴予定の方は、先にアニメを観ることをお勧めします。
また、この記事は、あくまで個人の「感想」であって、「正解」ではありません。こんな考え方や感じ方もあるのか、くらいに受け取って頂けると幸いです。
2 「告白」
第10話のサブタイは、「告白」です。
フォロワーから告白されて、デートの準備をする桃恵。スマホの予定帳には、パックをして寝て、5時に起きて朝食、とありました。さらに、予定帳では、
朝食、「バナナスムージーで我慢!」
デートは「スカートで行く!!!」
12時半「手を繋いだりする?」
とありました。ハンパなく可愛い!!!
一方、アイとリカは、アカ・裏アカに、前回判明した田辺美咲との関係を問い詰めていました。ところが、追及もそこそこに、アイとリカの興味の対象がねいるのキャラチェンへと移ります。髪を下したねいるは可愛いけど、頬を赤らめている姿はさらに可愛かった!
けど、前回の第9話で、ねいるはお尋ね者になっているかと思っていましたが、そんなことなかったようですね。てっきり、アイとリカの家を交互に居候でもしているかと思っていました。
そして、アイたちの興味の対象は、最終的に、男子から告白されたという桃恵へと移ります。命のやり取りをするエッグより、恋バナが優先されるあたりがアイたちらしいですね。
しかし、告白した男子は、桃恵のことを男子だと勘違いしていました。あれだけ頑張ってたのに...リカの言う通り笑えない。ただ、パニックが慰めてくれたのが唯一の救いでした。
3 トランスジェンダー
今回の桃恵の夢は、おそらく駅ビルですね。
エッグの子は、「栗田薫」。生物学的な性は女性ですが、性自認は男性です。つまり、トランスジェンダーということになります。
ワンダーキラーは、薫が所属する「剣道部の顧問」。天狗のような姿で、鼻の先から粘液のようなものが伸びていたのが、気持ち悪かったです。現実の世界では、薫をレイプし、妊娠させ、中絶させています。また、薫の悩みに対し、「自信を持ちなさい」とまったく分かっていないところが、さらに輪をかけて不快でした。やられ際に、桃恵に対し、「改めて君を指導したい」と最後まで最悪のやつでした。
「剣道部の顧問」を倒した後、薫は、桃恵にキスをして消えました。桃恵は、顔を真っ赤に染めながら、桃恵を見つめるパニックに「しー」です。きっと、「男の子」から好意を持たれたのは初めてだったんでしょうね。今回は、桃恵の可愛さがこれでもかというほど溢れていました!
なお、トランスジェンダーと混同する用語として、「性同一性障害」があります。これは、医学用語および法律用語(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律2条)ですが、精神疾患という捉え方をしているという批判がありました。そこで、「性別不合」という概念が登場します。なお、同性愛についても、精神疾患ではないと考えられるようになってきています。
このように少しずつですが、多様なセクシュアリティが尊重される社会へと移行するなかで、先日、トランスジェンダーを扱った『ミッドナイトスワン』が日本アカデミー賞の最優秀作品賞を受賞されました。おめでとうございます!作品を通して、誤解なく、理解が深まるといいですね。
4 ゲームクリア
薫と別れた後、いつものホームに、見慣れない更衣用カーテンのようなものが現れます。カウントダウンが始まり、そこから出てきたのは、彫像ではない「ハルカ」!しかも喋った!!しかし、桃恵は、ハルカに触れることが出来ずに、すぐに消えてしまいます。
ゲームクリアのようですが、現実の世界では、おそらくハルカは生き返っていません。ハルカの体は、無いでしょうからね。
今回の件で、「ゲームクリアしても、彫像の女の子が、①同じ個体として、②同じ世界線の、③現実世界で、④直後に、生き返ることがない」ことが証明されました。
一方その頃、リカとねいるは、ラーメンを食べていました。仲良すぎぃ!今週も、ねいリカの供給が止まらない!!
5 「生き返る」とは
さて、今回、「ハイフン」という謎の新キャラも登場しました。彼女が言うには、ハルカは生き返ったとのこと。しかし、現実世界にハルカは確認できません。
そこで、ハルカが生き返ったことを前提に、なぜ現実世界にいないのか考えてみます。
上記の「ゲームクリアしても、彫像の女の子が、①同じ個体として、②同じ世界線の、③現実世界で、④直後に、⑤生き返ることが確認できない」を思考のスタート地点として考えます。
第一に、上記「①同じ個体として」です。つまり、ハルカが生き返っているとすると、同じ個体として生き返っていないという考え方ができます。
この場合、他の人に憑依するパターン、まったく新しい人として生まれているパターン、新しい人として生まれる準備をしている(輪廻転生)パターンの3パターンが考えられます。
以下は、「同じ個体として」生き返る場合です。
第二に、上記「②同じ世界線」です。つまり、ハルカが生き返っているとすると、アイたちとは全く異なる別の世界線で転生したと考えることができます。これは、第9話で、死の世界を垣間見た寿が「パラレルワールド」があったというセリフとも合致します。
第三に、上記「③現実世界」です。つまり、ハルカが生き返っているとすると、現実世界とは違う世界、たとえばエッグの夢のセカイのような非現実世界です。これは、上記第二の考えと似ていますが、現実世界ではないという点で異なります。寿がいう「パラレルワールド」の定義次第では、こちらも含まれるかもしれません。
第四に、上記「④直後に」です。つまり、ハルカが生き返るとすると、まだ生き返る準備段階で、準備が完了次第、「これから」生き返るという考えです。
第五に、上記「⑤生き返ることが確認できない」です。つまり、ハルカが生き返っても、桃恵たちにそのことを認識することができないだけで、霊体のような状態ですでに生き返っているという考えです。この考えであれば、ハルカが透けて消えたこととも符合します。
とりあえず、この5つのパターンが考えられそうです。まとめると、第一が人的問題、第二と第三が場所的問題、第四が時的問題、第五が認識の問題です。
皆さんはどう考えますか?もちろん、これらとは異なる第六の考えがあるかもしれないので、その考えも含めコメントを貰えると嬉しいです。
6 桃恵のメンタル崩壊
ハイフンの猟奇的な行動により、桃恵は、メンタルが崩壊してしまいます。そりゃ鶏の唐揚げなんか食えるわけない。食事の問題だけでなく、不眠症も併発しているようです。
ハイフンの声を担当する大谷育江さんは、可愛らしい声を聴くことが多いので、ハイフンが余計に気味が悪かったです(褒め言葉)。
厚労省における「不眠症」とは、入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害などの睡眠問題が1ヶ月以上続き、日中に倦怠感・意欲低下・集中力低下・食欲低下などの不調が出現する病気をいいます。
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-001.html
ということで、厚労省の定義に当てはめると、「1ヶ月以上」という期間は経過していませんが、桃恵は、明らかに不眠症の症状が出始めています。食事と睡眠は生物が生きるうえで必要不可欠なので、彼女の心身の健康状態が心配です。
デートを楽しみに準備したり、薫とのキスでガチテレしていた姿からは、想像できない状態になってしまい、観ているこちらの気持ちも追いつかない有様でした。
7 潜熱
沢木先生は、目標だった賞を取り、教師を止め、絵描きとなることを決めます。その第一歩として、個展「潜熱」を開きます。
アイは、他の絵には興味を示さず、沢木先生に言われたとおり、一番奥の絵だけを見ます。はっきりとは分からなかったのですが、おそらく、その絵のタイトルは、個展の名前と同じ『潜熱』です。
「潜熱」 とは、熱したり冷やしたりする際に温度は変化せず、物質の状態変化のみが起こる際の熱をいいます。ここでいう状態変化とは、子供から大人へと変化することですね。
『潜熱』には、以前書いていた絵と違い、オッドアイの両目が描かれ、今よりも大人になったアイがいました。また赤と白の花も描かれています。おそらく、椿かサザンカです。そして、花がやや筒状で立体的で厚みがあり、鋸歯が浅いことから、椿ではないかと思います。
赤い椿の花言葉は、「控えめな素晴らしさ」です。また、白い椿の花言葉は、「申し分のない魅力」です。前者が「現在」のオッドアイにコンプレックスを抱くアイ、後者が「大人」になったアイあるいは多恵に対する沢木先生の想いではないでしょうか。
アイは今の自分を見て欲しいのに、沢木先生は、大人になったアイへ想いを寄せています。また、沢木先生は、「ママの娘だから、君は『自信』を持っていいんだ」と言います。「剣道部の顧問」と同様のセリフです。どちらの教師も、目の前の生徒のことを正しく見ることができていません。
子供である今の自分を見ていなことが分かり、アイの中で沢木先生への淡い想いは、ピリオドを打ちます。だから、「小糸ちゃんは、なぜ死んだんですか」と真っすぐ『両目』で、問うことができました。
あのまま沢木先生を想い続けるより良かったんでしょうね。失恋の苦しさがありながら、すぐに切り替えて真実を追求するアイのタフさが凄いです。というより苦しいからこそ切り替えたという見方もありますけど。
8 アカと裏アカの目論見
アカと裏アカは、ジャパンプラティの創始者で、現在は肉体を捨てて脳だけキープしていると判明します。個人的には、ルパン三世のマモーを思い出しました(『ルパン三世 ルパンVS複製人間』参照)。
体は脳よりも早く老化します。老化は生から死への経過です。つまり、体を捨てたアカと裏アカは、死に対抗しているといえます。死とは、アカたちの言う「タナトス」のことですね(第8・9話の感想「9 死の誘惑」参照)。
アカは、「僕たちの目論見は外れてしまうかもしれないね」と言った後に、「タナトスに立ち向かうには、対極にあるエロスの戦士たちが必要だ。桃恵はもう一度行ってくれるかな?」と言います。
タナトスに立ち向かうエロスの戦士たちがいなくなることを心配していることから、エロスの戦士たちがタナトスに立ち向かうことが、「僕たちの目論見に含まれていることになります。
「エロスの戦士」とは、アイたちのことですね。エロスとは、死に対する「生」のことです。
このタナトスは、ワンダーキラーではなく、今回登場した「ハイフン」やハイフンのセリフで出てきた「フリル」のことかもしれません。
9 おわりに
今週は、トランスジェンダーを扱う作品が日本アカデミー賞の最優秀作品賞を受賞したり、また、同性婚訴訟でも画期的な判例(平成31年(ワ)第267号 損害賠償請求事件)が出てきました。
ワンエグも佳境に入り、謎が解明され始めると同時に、アイたちも苦境に立たされて辛い気持ちになります。特に、桃恵が心配です。でも、アイは失恋を乗り越えられそうで少し安心しました。
では、また次回お会いしましょう。
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