見出し画像

走るの、大嫌いだったのに。

私は朝、会社まで歩いて通勤している途中で、よくランニングをしている人を見かけていました。

「なんで朝から走るんだろう? 私には絶対無理だな。」

ランニングをしている人たちを横目に、私はそんなことを思っていました。


私は子どもの頃から走るのは大嫌いでした。

マラソン大会や、体力測定のシャトルランは憂鬱で仕方ありませんでしたし、部活はもちろん、ずっと文化部を選んできました。

当時はなぜ、みんなが走り込みをしなくてはいけない運動部に入るのか、理解できませんでした。


そんな私には当然、社会人になってから運動する習慣は全くありませんでした。

仕事から帰ってくると、家でお酒を飲みながらスナック菓子を頬張り、ごろごろしてばかり。

「朝からランニングするような意識高い人には、とてもこんな堕落した生活見せられないなあ、ははは。」

おい、笑ってる場合じゃないぞ。

そう。当時の呑気な私に突然、そんな風に笑っていられないような出来事が起こりました。


ある朝、会社に出社して突然、片耳の耳鳴りが止まらなくなりました。

耳が詰まったような感じがして聞こえも悪くなり、病院に行きました。

でも、原因は分からないようで、お薬を処方してもらいましたが、一向に治りません。

数ヶ月経って、1年経って、何回も病院に行ってるのに、ずっと耳鳴りが止まらない。

そして会社で仕事中に突然、吐き気を伴う激しいめまいに襲われ救急車に運ばれました。

搬送された病院で脳の検査をしてもらいましたが異常はなく、めまいは半日ほどでおさまりました。

しかし、それからも何度も数時間続く吐き気を伴う激しいめまいが繰り返し起こりました。

「メニエール病かもしれません」
お医者さんはそう言っていました。

めまいは本当に苦しくて、処方してもらった酔い止めもまったく効きません。

メニエール病の方に処方される利尿剤という、とても苦いお薬も頑張って飲み続けてみましたが、一向に改善する様子もありません。

この頃は本当に苦しくて辛くて、「はやく治したい」と思い、メニエール病に関する情報をたくさん調べていました。


メニエール病の原因は、はっきりと分かってはいないようです。

強いストレス、睡眠不足、疲労、気圧などが現在考えられている原因なんだとか。

たしかに当時、仕事で強いストレスを毎日感じていました。

そういえば、仕事のストレスを発散するために、酒を飲んでスナック菓子を頬張ってごろごろするという堕落した日々を過ごしていました…。

そして、メニエール病に有酸素運動が効果的だという情報も見つけました。

有酸素運動の代表といえば、そう、私の大嫌いな ”ランニング”。

「い、嫌だ、走るの嫌だ…!!…でも…」

でも、治らないのはもっと嫌だ。

そう思って、人生で初めて自分からランニングに挑戦しました。
走るの、大嫌いだったのに。


最初は、1分も走れませんでした。

すぐに息が上がって苦しくなってしまいます。

「苦しい、疲れた、帰りたい!もうやだ帰りたい!!」

心の中でそう泣き叫びながらも、死に物狂いで走りました。

朝の通勤途中ですれ違う爽やかなランナーたちとは比べ物にならないほど、暑苦しく酷い形相で必死に走っていたと思います、それもかなり遅いペースで。

「やだ、今日はサボりたい!あんな苦しいの嫌だ!」

ランニングに行く前はいつもこんな弱音を吐き散らしています。

「こんな嫌なことして、苦しい思いして、治らなかったら?これに意味がなかったら…?」

走っている間もネガティブな考えばかり浮かんでいました。

でも、走りました。
走り始めてからは、めまいが起こりづらくなりました。

そして、ランニングだけでなく、ストレスそのものから距離を取ることも重要なようでしたので、転職も頑張りました。


転職して、ランニングを続けて、半年ほど経った頃。

あの苦しいめまいがほとんど起こらなくなりました。

本当に嬉しかった。

でも、残念ながら耳鳴りは今でも治っていません。

これからも、この厄介な病気と付き合っていくことになりそうです。

それでもきっと、大丈夫です。

この病気がきっかけで、ランニングを始め、今では筋トレしたり山をハイキングしたりと、以前では考えられなかった自分になることができました。

とはいえ、今でも走るのは大嫌いです。

運動する習慣がついた今の私でも、走るときに弱音のオンパレードを心の中で叫ぶ癖は変わっていません。

でも、苦しさを乗り越えて成長できた気がして、走るのが少しだけ、前より好きになれたと思います。

あー、今日も走りたくないな!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?