リアルファンタジー・サスペンスADV『岩倉アリア』クリア感想
6月27日に発売されたリアルファンタジー・サスペンスアドベンチャー『岩倉アリア』の全エンディング・全sidestoryを見たので感想を語りたいと思います。
具体的なネタバレはしませんが、未プレイの方は何も情報を入れずに遊んだ方が楽しめる作品だと思いますので、クリア済みの方推奨です。
ご注意ください。
リアルファンタジー・サスペンスというジャンルについて
まず、この作品のジャンル「リアルファンタジー・サスペンス」について、発売前はどういう意味なのかとても謎だったのですが、クリアした今となっては言いえて妙だなと思いました。
お屋敷が舞台でいわくありげな設定というと「ミステリー」に分類されそうですが、『岩倉アリア』は謎を解いていくミステリーではありません。
タイトルにもなっている「岩倉アリア」はこの作品のヒロインで、主人公の壱子が女中として働くことになる岩倉家のお嬢様です。
彼女が何者であるかについてはゲーム中盤には明かされるため、正体についての謎を引っ張るわけでもありません。
アリアの設定はたしかに「ファンタジー」と言えるものですし、彼女を中心に岩倉家で起こっていること、そしてそこに壱子が関わっていく流れは「サスペンス」と言えるでしょう。
「リアル」についてですが、アリアの設定は非現実的なものではあるのですが、物語の焦点はそこではないと思いました。
あくまで一人の女性としてのアリアと壱子が何気ないやりとりを重ねていき、徐々に関係を深めていくことにスポットが当たっている作品だと感じています。
アリアという女性
『岩倉アリア』で立ち絵のあるキャラクターは岩倉アリア、その父の周、そして料理人のスイの3人だけで、その中でもアリアの登場回数が一番多く、体感ではプレイ時間の8割をアリアを見て過ごしていた気がしました。
青ざめて見えるくらいに白い肌、長くつやつやとした黒髪、どこか幻想的な白いワンピースをまとった浮世離れした美しさを持つアリア。
ですが、アリアは美しいだけの人形ではありません。
親しくなっていくにつれ色素の薄い大きな瞳が時にいたずらっぽく、時に物憂げに、意外なほど表情豊かに感情を表すことに気づいていくことになります。
耳触りの良い彼女の声が楽しげに弾んだり、あるいは拗ねたように響く。
そうやってアリアの人間らしさに触れ、彼女と一緒に過ごす時間が長くなるうちに、壱子だけでなくプレイヤーも岩倉アリアという女性のことを知り、美しいだけではない彼女のチャーミングさにどんどん魅了されていくのでしょう。
人間ドラマを描いた作品
はじめにこのゲームはミステリーではないと言ったとおり、アリアが何者であるのか分かった以降は、いわゆる真相を解き明かすような「謎」めいた要素というのはほぼありませんでした。
ですがアリア以外の登場人物についてもどういう原理で動いているのかと疑問を抱く場面はたくさんありました。
作品全体を振り返ってみると『岩倉アリア』は非現実的な設定がありつつも、屋敷という閉ざされた空間での人間ドラマを描いた作品だと思います。
アリアという特別な女性を中心にそれぞれが思惑を持ち、目的を達成するために動いている。
まさに「リアルファンタジー・サスペンス」と言える作品でした。
最後に
自分はもともとアドベンチャーゲームが好きなのですが、このところは文字を追っていると眠くて一向にプレイが進まないということに悩んでいました。
ですが『岩倉アリア』はサスペンスのハラハラ感、壱子とアリアのやりとりのドキドキ感、イラストの美しさと目を惹く絶妙な演出、フルボイスの声優さんたちの演技、雰囲気たっぷりの音楽など刺激的な要素満載の作品で、眠くなる暇がありませんでした。
総プレイ時間はおそらく15時間前後だと思うのですが、ちょっとだけ先を見ようと思って始めたら気がつけば3時間が過ぎていた、ということもあり、久々にゲームに熱中するという体験をした気がします。
そういえばストーリーメインのゲームをプレイしたのも久しぶりかもしれません。
ダウンロード版で購入したのですが4,400円は個人的にはかなりお買い得だったかなと思います。
ここまで読んでいただいてありがとうございました!
7/20追記:ゲームメディア『Gamer』にてとても丁寧で素晴らしいレビューが公開されていましたので、『岩倉アリア』に興味がある方でもっと詳細を知りたい方はぜひチェックしてみてください!