“忘れるメカニズム”を使って忘れない方法:エビングハウスの忘却曲線
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人はどのくらいのスピードで忘れるのか?
人間はどのくらいでものを忘れるのかを調べた研究があります。研究したのは、19世紀のドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウス(Hermann Ebbinghaus)。
エビデンス博士は、1880年から1885年にかけて、自ら「子音・母音・子音」から成り立つ無意味な音節(rit, pek, tas, ...etc)を記憶し、その再生率を調べ、忘却する曲線を導きました。調べた結果は以下のようなものでした。(※1)
20分後には、節約率が58%
1時間後には、節約率が44%
約9時間後には、節約率が35%
1日後には、節約率が34%
2日後には、節約率が27%
6日後には、節約率が25%
1ヶ月後には、節約率が21%
これをグラフにするとこうなります。
節約率とは、一度記憶した内容を再び完全に記憶し直すまでに必要な時間(または回数)をどれくらい節約できたかを表す割合です。節約率を式で表すと
例えば、最初に「rit」を覚えるまでに10分を要し、20分後に覚え直すと約4分を要したとします。この場合、覚え直すのに最初と比べ、6分節約したことになります。すると節約率は 6(節約された時間)÷ 10(最初に要した時間)=0.6= 60% となります。
記憶してから、1日の間に急激な忘却が起こりますが、その後の忘却は緩やかに起こります。この実験で使用されたのは相互に関連を持たない無意味な音節であり、学問などの体系的な知識では、より緩やかに忘却が起こると考えられます。また、再認可能な「忘却」と「完全忘却」を区別していないという批判があります。
人は1日で7割ちかく(無意味な文字列を)忘れる
彼の実験では、無意味なアルファベット列の記憶の保持力を時間経過とともに計測したもので、このように忘れていきます。
無意味な文字の羅列ではありますが、わたしたちは、1時間で半分、1日で7割近く忘れるようにできていることがわかります。1週間も経つと1/5くらいになります。どうしてそんな忘れてしまうのかというと前述の通り、「忘れる」というのは、優れたメカニズムなんです。2017年のカナダのこちらの論文を論拠した話です。
脳細胞は、積極的に情報を捨てようとしている
この論文によれば、「脳細胞は、積極的に情報を捨てようとしている」のだそうです。なぜか?正確な意思決定がしやすくなるから。思考を洗練させるために片っ端から脳内を片付けてくれる機能が忘却なんです。シャーロック・ホームズが、『緋色の研究』(A Study in Scarlet)のなかで、天体に関する知識を得たとたんに「はやく忘れないと!」と言うシーンがあります。それは彼には不要な知識だったからです。このホームズが意識的にやっていることを、脳細胞は人知れずコツコツと頑張っているわけです。
ちなみに、一度忘れたことを再び学ぶと記憶の定着は強くなるます。なので
必要な知識は一度忘れてまた学ぶと良い
わけです。さてエビングハウスに戻ります。放っておくと忘れるので、忘れそうになったときにまた学習すると忘却を抑制できます。
定期的な復習が記憶を定着させるわけです。どういうタイミングが良いかと言うと
復習は、1日後、4日後、7日後、11日後、15日後、20日後
です。このタイミングを使った暗記アプリがあります。
これ以外にもいろいろあります。
わたしは英単語を毎日勉強しているのですが、こちらのサービス(月800円くらい)もエビングハウスの忘却曲線をベースにした復習タイミングを提供してくれます。
また読んだ本を忘れたくないなーという方も多いと思うのですが、その場合は、アウトプットが良いよねって言われていて、わたしはとりあえず実践しています。これらの本が読書の有効化にはおすすめです。
まとめ
何かを記憶しようとしたら「繰り返し」が効果的ということになります。どんなタイミングで繰り返すのかというと
1日後、4日後、7日後、11日後、15日後、20日後
間隔が開きすぎるとわたしたちは忘れてしまうので、すごい分厚い本などは、ゆっくり読むよりざっと読んで、わからないところを再び読んで、ということを繰り返したほうが良いでしょう。ゆっくり読んでいたり、学習していると、最初に学んだことを途中で忘れてしましまうからです。
参照
※1