
米国シンクタンクが2028-29年にEV価格はICE並みになると予測
米国の環境/運輸関連のシンクタンクであるICCTが昨今のリチウム採掘/精製に係るPJの増加に対応した研究結果を公表しました。
これによると米国内のリチウム供給は増大し、2028-29年までにEV価格は現行のICE車並みになるとのことです。
ただ、EVに係る希土類はリチウムだけでない点は留意必要ですし、EPA規制も緩和方向にある状況下では楽観的とも見えます。
1;リチウムとEV
中国のようにEVが普及/拡大した国では[製品価格と原材料価格]が密接に関与するが、米国に代表される成熟国では価格低下が困難…
成熟国では原材料価格低下の影響は2020年代後半まで実現厳しいと国際クリーン輸送評議会(ICCT)による調査で明らかに。ICCTのリチウム供給予測が現実のものとなれば2027-28年にEV価格はICE車と同等になる可能性が高い
2;リチウムを取り巻く現況
LiB等のEVバッテリーは高価な希土類(リチウム/ニッケル/マンガン/黒鉛など)が必要で、しばしば"White-Gold"と呼ばれるほど高価で希少。環境政策/意識の変化によるEV偏重で、特にリチウム需要はここ数年で急増
現在は世界的なWhite-Gold Lushが発生し、官民ともに産業用途向けリチウムの抽出/精製に躍起に。
世界のリチウム供給は主に[リチウムトライアングル(アルゼンチン/ボリビア/チリ)]での蒸発池及びオーストラリアのと露天掘りで賄われる
一方で米国は国をあげてリチウムの抽出/精製能力を大幅に増強。ICCTによると、米国と米国が貿易協定を結ぶ国々を合わせて100以上のリチウム採掘/精製PJが進行中とのこと。
3;リチウムに関する予測
ICCTの推計によると米国の今後のPJ進展で需要を大きく上回る供給確保が可能で、全世界供給量に占めるシェアは現在の2%弱から17%まで増加
(需要)2032年までに小型EVに年間340ktpa相当の炭酸リチウムが必要
(供給)2025年までに抽出/精製能力はそれぞれ1,310ktpa/1,030ktpaと予測
(供給)2032年までには両方とも2,000ktpaを超える規模に増加する算段
米国での小型EV/商用EV向けのリチウム供給量は需要を上回り、ICCTの推測では需要は予測供給量の17-33%程度になるとされる
リチウム以外のニッケル/マンガン/黒鉛といった重要鉱物の供給もリチウムに比例して必要、現状では劣勢だが実現した場合にはEVバッテリーコストは相当に低減する見込み
パックコスト…(2023年)122ドル/kwh→(2027年)91ドル/kWh→(2032年)67ドル/kWh
これが実現すれば[航続距離500Kmの平均的なEV価格は、2028-29にICE車同等になるとする
4;その他
各種重要鉱物とEVバッテリーの一貫製造に関し、様々な設備はまだ建設中でフル稼働するまでには時間がかかる可能性が高い
またICCT予測はEPAが現在提案する2027-32年の複合汚染物質基準に基づいている
-32年までに新型小型車の67%をEVにすることの義務づけ
-大統領選を控えてバイデン政権はEPA規則を変更する方針で、変更の幅によりEV需要自体も伸び簗む可能性がある点には注意が必要