課題は多いけど大事なLiBリサイクル/資源循環のお話
カナダ本社のリチウムイオン電池(LiB)再処理事業者大手のLi-Cycle社(Li社)が欧州で再処理工場を稼働させました。ドイツ中心部のマクデブルグに設置された施設ではEV-LiBを周辺大都市から集めて分解/破砕/精錬/加工まですべてを行うとしています。
将来的には複数拠点を設置して物流コストを下げつつ事業化する算段だと思いますが、資源循環の一つとしてご案内です。
1;Li社と本施策
Li社はカナダ本社のLiBリサイクル大手企業で、北米でこれまで事業展開してきたが[電池廃棄物][使用済みLiB]の多さから欧州に進出。Li社は既に加;4か所/米;3か所の処理施設を保有し、今回の独施設稼働で年間81,000tのLiB処理能力になると予測される。
Li社はハブ&スポークと呼ぶ事業モデルを取っており、[スポーク=破砕処理(LiB材料(Li/Ni/Coなど)を含むブラックマスを生成)][ハブ=資源回収→処理/最終加工]というフローを取る。今後も事業モデルに沿った展開を通じ、処理能力を増強する方針。
北米/ロチェスターで建設中の施設はDoE補助融資375M/USDで賄っており23年後半稼働予定。また、欧州施設第2弾はグレンコアと共同で同社冶金施設の一部を使って伊ポルトヴェスメに建設する計画。
施設の属性的に大都市近く/流通要衝であることが求められ、今回のマクデブルグも[水運要衝][ベルリン/ライプツィヒ/ハノーファーの真ん中]という土地にある
2;処理施設の概要と稼働
独マクデブルグに建設した再処理施設が商業運転を開始、最終的な処理能力は年間30,000tとなる想定。今回はメインライン;10,000tの稼働が開始、今後追加メインライン/補助ラインの2本が23年後半に追加される予定で、北米以外で最大/最初のスポーク処理施設で独の電池製造廃棄物/使用済みLiBの多さを見越しての建設となる
Li社は第3世代スポーク技術(特許取得済み/ハブ&スポーク技術とする)を利用した処理に強みを持ち、本施設も同技術をベースとする。安全性を担保した破砕処理(スポーク)と湿式精錬による資源回収(ハブ)を組み合わせた技術で、LIB構成材料の最大95%回収が可能で、あらゆる形態(EV含)のLiBを放電/分解/熱処理を必要としない方法で直接処理する
3;LiBリサイクルに関して
リサイクルは[1;廃棄LIBの収集運搬][2;前処理(分解/放電)][3; LIB再処理]の大きく3工程で形成されるが各工程で課題がある。
[1;収集運搬]
最終製品には様々な電池が利用されており収集段階では混合状態。完全なLiBのみ収集には追加コストがかかる(分解/人手選り分けなど)
[2;前処理-分解]
電池を破砕できる状態まで分解&放電、物理的な破砕/選別で中間財であるブラックマスを生成するが、処理能力が一定大量にないとペイしえない
[2;前処理-精錬]
溶媒/抽出でブラックマスから金属化合物を湿式精錬する段階で[CoSO4/NiCO4/LiCO4]等を生成する
[3;加工処理]
上記金属加工物をLiBに利用できるまで純度を上げる精製を行う。
現在LiB再処理事業者はBM生成/湿式精錬にリソースを割くが、処理能力による最低でも数十億円かかるため、年間数万t単位で処理しないと投資回収が困難なのが現状。
例えば、5,000t/月の処理にはPCなど民生品のLiBだと50g程度のため1億個が必要で、回収/運搬に相当なコストがかかり、ある程度大きいEV/蓄電装置などのLiBを狙う必要が…。更に回収エリアも広範にわたり、運搬コストのみならずLiB以外の混入も想定される
4;LiBリサイクル;EVに関して
EV搭載LiBはセル数/化学組成/構造などの再処理に必要な情報がクリアで、分類/セル数の多さ/形状や躯体の一定性から再処理しやすいが下記課題もあり、簡単ではない…
[1;運搬コスト]
公正手続で取り出したLiBでも、運搬段階で安全規制に適合する必要があり、パック詰めや輸送速度などで効率性が追いづらい
[2;前処理]
予め決まった工程でLiBパッケージの解体/分解してモジュールにする必要があり、1つあたり30-45分かかって[保管場所][人件費]などでコストがかさむ
[3;化学組成]
EV用LiBの化学組成が技術革新で変化し続けており、再処理するだけの事業利益を生み出せなくなる可能性がある
Li社はハブ&スポークシステムの構築でBM製造拠点を大量消費地近くに多く造成し、数カ所の湿式精錬工場に集約する方法をもくろむ