BMWのゼロエミッション達成施策;EVとFCVの両輪で達成を目指す
FCVの開発/製造でトヨタと全面提携したBMWですが、ゼロエミッション達成にはEV/FCVの双方活用が必要との認識です。
BMW経営陣はイベントで発言しており中長期的な達成ロードマップを示しますが、水素/FCVに関してはインフラ整備/エコシステム形成が必要で、そこには政府等の補助策が不可欠とも。
まだまだ事業としては立ち上がりに不透明さを抱える水素事業、当面は公的補助に向けたロビイングなどが重要となりそうです。
1;水素自動車へのBMWの認識
9月中盤にBMWはToyotaと水素自動車の開発やインフラ整備で提携、28年に水素燃料乗用車を量産する計画を公表
BMWは水素特有の課題は認識しつつも、全世界的なゼロエミッション達成に向けて[BEV+水素自動車]の組合せは最適とする。一方で水素スタートアップへに資金は減少し、米国では水素ステーションが閉鎖数が開業数を上回っている
BMW及び水素コンサルの認識は以下の通り、[BEV+FCV]によるゼロエミッション達成が可能になるとする
(BMWの水素技術/自動車PJのGen-PM; Juergen Guldner氏)
[水素車は、携帯電話のように車に充電したくない顧客ニーズに対応することでBEV市場の補完手段となりうる]
[水素車は、従来ICE車の燃料補給の利便性とEVメリットを両立するシナリオを提供できる]
[人々の行動変容には選択肢提供が常に良い方法だ。何かを奪って単独の選択しか与えないのは悪手だ]
(水素コンサル;CleanEpicの代表; Jason Munster氏)
・BEV と水素燃料電池自動車の組み合わせは、より費用対効果が高く、持続可能とする
[BEVの特徴はGridへの投入量に応じて限界費用が上がる点にあり、現在多くの場所でグリッド容量が余っており急速充電器を追加できる]
2;水素自動車の課題
水素インフラ構築が事業の肝だが、BEV(充電ステーション)以上にコストがかかり遥かに未発達な状態。ゼロエミッション達成には化石燃料でなく再エネでの電気分解/水素生成の必要があり、関係者は下記のようにコメント
(Jason Munster氏)
[水素燃料ステーションとOEMだけでなく、"生産-流通-エンドユーザ"という関係者すべては実益/罰則を伴うリスクを負わないとBEVの成功を再現できな]
[CA州には全米で最も多くの水素ステーションがあるが、トヨタのミライ所有者が簡単に燃料補給するほど多くはなかった]
(Juergen Guldner氏)
・Miniの技術系スタートアッププラットフォーム兼VC企業であるUrban-Xと協力して、水素方程式に適合する企業を探している
[BMWはエコシステム構築に取り組んでおり、商用顧客との潜在パートナーシップを通じて需要を喚起しようとしている]
[BMWは過去20カ月間に20カ国以上で水素車のPoCを行っており、肯定的なフィードバックを得ている]
3;水素を取り巻く不明瞭さ
BMWは[回収期間の長さ]と[長期/多額の資本]から水素ビジネスとVCは親和性が低いとする
22年に署名/発効したIRAにも、クリーン水素生産に対する税額控除が含まれているが、ガイダンスが不明瞭でバッテリー業界のようなブームに与っていないとする。
IRAの当初のガイダンスは[議論の余地][制限の厳しさ][最終決定がまだ]といった観点で問題を抱える…補助金の総額も不明で、300億~3,000億ドルの間で振れている。
IRA水素税額控除の3要件は[増分性][時間的マッチング][実現可能性]だが、要件の厳しさにより補助金資格を得るのは困難
目指すのは[電気分解への電力供給に再エネを利用し、水素生産が排出量の削減につながるようにする]ことにあるが、現実を踏まえると[堅牢な再エネシステムが開発されるまで、短期的には化石燃料由来の電解装置]にも許可を出すべきとされる