Ibotta;CEOが米国IPOの効用について語る
米国でキャッシュバック/ロイヤリティマネジメントPFを展開するIbottaのCEOがIPOへの認識をインタビューで答えています。
曰く、公開化による企業信頼性/正統性の獲得とエンプラ取引獲得や採用に高い効用を得ることが出来たとします。
米国ではここ数年、SPAC上場で荒れに荒れたIPO市況ですが、徐々に正常化も進みつつあります。
1;Ibottaの概要
2011年創業のリワード/キャッシュバック関連アプリを提供する買物SNSを運営するデジタルPF企業で幅広い提携先との連携を通じた経済圏に特徴。業種としてはパフォーマンスマーケティングPFで、Ibotta Performance Network(IPN)と呼ばれるNWを構築。
SNS形式の簡単なアプリを通じて2億人以上の消費者にデジタルプロモーションサービスを提供している
提携先としてはWalmart/GeneralMills/Croager/Exxon-Mobile/Dollar-General等の小売業界と緊密な関係。IbottaのPFはAIによる価格提示/推奨エンジンをベースとしており、消費者の価値観に連携した価格を配信する
財務状況はFY23において売上高;3.2億ドル(YoYで52%増加)/純利益;0.38億ドル(YoYで黒転)。投資家は戦略投資家たるWalmartに加えて金融投資家としてKoch Disruptive Industries/紀源資本/Harbor Spring Capitalなどが名と連ねる
2;IPO市況について
IPO市場は投資家の期待に反して24年にも回復の兆しが無く、金利上昇/米大統領選挙の趨勢などの影響から多くのIPO候補企業が市況改善を待つ。
22-23年にIPOを予定していた企業の多くは現在の市況を見て静観/傍観状態にあり、21年の好況時につけた高い評価額のツケを払っている…。好況に伴う高い評価額ゆえにダウンサイズ上場/ラウンドを許容しないと調達自体が出来ない状況
公表資料によるとIPOは[310件(21年)→80件(22年)→85件(23年)→37件(24-上)]と低調状態。一方でFRBの追加利下げ観測や、IPOに向けたアドバイザり業務をIB各社が強化している噂もあり、25年にかけて回復する可能性も…
3;IbottaのIPO評価
企業向けバックエンドの給与/報酬インフラを構築するIbottaは24/04にNYSEに上場、IPO価格は想定価格(88ドル)を40%近く上回る117ドルで上場
直近9月には63ドルで取引、時価総額は17億ドルをつけている。CEOのLeach氏は[IPO時点の株価の半分である事実がIPO失敗の証左とみる向きもあるが判断は時期尚早で、InstaCartは上場1年で最高値を付けている]と語る
IbottaのCEO;Brian Reach氏は、自社IPOを後悔しておらず膨大な準備が必要故に市況を見極めるのは難しいとする
-[FRBの政策を見通すことは困難で、投資銀行家は待つ方がいいと常に語るが待っていても何が起こるか分からない]
-[IPOは目的でなく手段であることを多くの企業は勘違いしており、一部のIPOゴール企業が様々な認識を歪めている]
-[IPO以降の株価は乱高下したが、半年で落ち着いてきており企業経営の観点で見れば上場の価値を享受できたと認識している]
3;IPOの効用
Leach氏は上場により企業は[正統性]を手に入れ、エンプラ企業では潜在的顧客を獲得する上で役立つとし、非上場企業だったら契約できなった案件が多数あるとする
-[顧客企業はIbottaを信頼しており、上場による正当性がそれを後押ししている:
-[正統性の背景には財務状況/事業状況の開示があり、正当な開示に基づく判断材料の提示によって安心感を醸成している]
上場による正統性は採用活動にも影響しており、開示による透明性が同社の魅力を相対的に高めている
-[不明瞭で非公開な評価に基づくSOは既に信頼性を失っており、上場で透明/公正な価値を市場に提示したことで会社の魅力を高めることが出来た]
4;過去のIPO延期
24/04のIPOはIbotta社にとって第一の選択でなく、過去に上場を検討していたが延期に。20-21年のSPAC上場ブームの中で投資家から上場要請があり、Ibottaは上場アドバイザリーを起用。当時は21年秋のロードショー開始に向けてS-1文書(IPO開始へのSEC提出書類)を準備していた
Reach氏はIPO準備当時にWalmartとの大型契約も控え、上場前に自社機能の確認をしたかったともしている
-[上場前の大型契約が実際に機能して価値提供できるかを証明することを優先したが、この決定に関係者が賛成したわけではなかった]
-[ただ、結局は正しい選択だったと感じるし、24/04の上場前に6四半期に渡る収益確保により健全な財務状況での上場を実現できた]