オフロードx自動運転の防衛産業での活用とスタートアップ
自動運転は全世界的にコスト高/誇大広告/相次ぐ事故などですっかり低調になりましたが、ここにきてオフロードx自動運転が俄かに注目を集めています。
米国では国防総省によるDARPAからのスピンアウトや国防予算の投下で軍事技術としての自動運転の実用化が進みつつあります。
日本でも国防予算の増加が進む中、政府主導での国防関連技術(Def-Tech)に注目と資金が集まることが想定されます。
今回はOverlandAIとPotentialの2社を紹介します。
1;オフロードでの自動運転とチャンス
オフロードでの自動運転というニッチ分野でのスタートアップ勃興/VC着目といった点で俄かに可能性を秘め始めている。詳細な地図データ/トレーニングデータなどに依拠しないソフトウェアを構築し、自動運転が不可能と思われた領域展開が可能になった
オフロードでの自動運転に関しては商用ロボタク/自動運転トラックの開発コスト高騰によって多くの自動運転スタートアップが閉鎖される中で、様々な企業が出現
PolymathRobotics/Forterra/Pronto.ai/Bear Robotics/Outriderなどの新たなスタートアップ企業が、[倉庫][鉱山][オフロード]に応用する野望を持って事業展開してきた
投資観点からも着目されており、VC;Autotech VenturesのMDであるAlexei Andreev氏は下記のように語る
-[私たちはオフロードの自動運転に資本投下しており、現段階では高速道路の自動運転から距離を置き、オフロードの自動運転に舵を取っている]
同VCは鉱山車両/フォークリフト/トラクターといった建機の自動化に注力。これら部門にとって、生産性向上/安全性向上と労働力不足を同時に解決しうる技術とみている
国防観点での注目も急増しており、今回紹介するOverlandはDARPAからスピンアウトしたスタートアップであり、スタートアップは防衛産業を顧客とし得る
-オフロードの自動運転は、米陸軍が最も有力な顧客になる可能性
-自動運転は商用に傾いたが、DARPAを始めとする国防総省のプログラムは継続
今後、多くの自動運転関連スタートアップが国防総省にアクセスしてくることが想定。例えば、SafeAI(自動採掘)やKodiakRobotics(自動運転トラック輸送)も国防関連PJに名乗りを上げているとのこと。国防関連資金はGrantの形で供与されるため、希薄化なく商業化まで継続する資金を提供
2;OverlandAI社について
偵察/監視/電子戦パッケージ配送など軍事作戦向けに設計された自動運転システムを開発、調達もここ最近で加速している
(24/04)
米陸軍の国防革新部隊から1,860万ドルの資金を獲得。調達資金は今後2年にわたるロボット戦闘車両(RCV)プログラム用の自律型ソフトウェアスタックのプロトタイプ構築に利用される
(24/05)
Point72 Ventures主導のSeedで1000万ドルを調達。資金は開発体制の拡大及び、自律スタックであるOverDriveの開発強化に用いられる
2-1;出自とメンバー
米国防総省;DARPA出自で、創業者のByron Boots氏はワシントン大学の機械学習享受/同大ロボット学習研究所の創設者でもある。大学在籍時から米国陸軍研究所/国防総省/DARPAと長い協力関係を持っている
DARPAで研究される[RACER(複雑環境における復元力を備えた自律ロボット)]のチームからのスピンアウトで、[厳しい地形に対応する自動運転車開発]が目標。研究プログラムは継続中で、OverlandにはGoogle/Nvidia/Apple/Waymo/Aurora/Embark/Argoなどで経験を積んだエンジニアやSpaceX/RTX/米陸軍で経験を積んだソフトウェアエンジニアが名を連ねる
2-2;Boots氏の狙い
Boots氏は軍用車を自動/遠隔運転とすることの利点を下記のように述べている
-[軍用車両は基本的に有人運転だが、自動運転に出来れば安全性/戦術機動性を増すことができるのは自明の理である]
-[車両走行は地形によって異なり、車載センサー(主にカメラ)だけで複雑なオフロード地形を自律移動/計算し、地面形状の理解/車両への影響などを瞬時に計算するソフトウェアが必要]
-[自律システムの利点の1つはSWがタスク実行時に、地上車両との通信リンクが失わても通信リンク再開までジルつ判断してタスク完了しようとすることにある]
-[当社技術はセンサーデータを取り込み、進行に応じて地形表現を構築。更に地図化を通じて地形を勘案した到達目標までのルートを発見する強みがある]
2-3;VCのコメント
Point72 Venturesの防衛技術チームのパートナー;Chris Morales氏は下記のようにOverlandの価値を強調
-[軍用地上システムは、多くの場合にデコボコな地形で機能する必要があり、既存の明確な道路/囲まれた敷地向けの自動運転技術は苦戦する]
-[オフロードでで運用上適切な自律性を提供するには非常に強力なチームが必要と考えており、Overlandはそこにリーチしている]
3;Potential社について
ATV/地下採掘車両/乗用車など多様な車両がオフロード環境に対応しうるADASを開発、これまでに620万ドルを調達
(24/05)
Brightspark Ventures主導で150万ドルを調達。調達資金は創業以来6年にわたって開発してきたADAS強化/高度化に用いるとともに、いくつかのPilotPJの実行に用いられる
3-1;Potentialの特性
同社のADAS/コアPFである[Terrain Intelligence(TI)]はオフロード向けADASの改善を目的として、オフロード地形を走行する ATV 試験車両で実証中。
コアPFはコンピュータービジョンを使用して、車両が複雑地形/変化する路面状況を確認/解釈/準備できるようにする。TIは単一カメラからの出た読み取りが可能で、カメラ/LIDAR/レーダーなどを追加配備せずに機能する
いくつかの機能段階を到達点としておいて研究開発を行っているが、下記の機能となる
[基本];オフロードADASは、[前方に通行不能な物体があること][新しい地形に基づいてより良いドライブ設定に切り替える必要があること]をドライバーに警告
[最終];既存のセンサーデータを使用し、それらの設定を微調整して、パフォーマンスの限界を押し上げることが含まれる。
3-2;Poirier氏の狙い
CEOのSam Poirier氏は下記のように語っている
-[職業エクスパートでない、オフロード&困難な運転を体験したい人をサポートするために当社のシステムは構築されている]
-[次の段階は、一般的にドライバーが支援する設定変更を実際に自動化できるかどうか]
-[ほとんどの車両には"2WD/4WD/SAND/MUD"といったモードがあるが、最終的に現段階では、切り替えるのはドライバー次第で、ドライバーはこれらモードをいつ使用するかを理解する必要がある]
3-3;技術面のコメント
Potential社のTech-Advisorを務めるScot Kunselmann氏は下記のように述べて技術力と有用性の高さを強調
-[個人ドライバーが、優れた専門知識を持っていても自分でできないことを支援ツールで支援でき、スタビリティコントロールは最たるものだ]
-[スタビリティコントロールを有効にするには、独立したブレーキ制御が必要。各車輪を個別作動できるため、車両のヨーをオフセットすることも可能になる]
3-4;提携/連携について
Potential社はソフトウェアの特許を取得し、車両に直接統合するためTier1サプライヤをOEMの双方と協力している。事業開発責任者は[スタートアップにチャンスを与える可能性が低いOEMでなく、Tier1サプライヤーとの関係に重点を置く可能性がある]と示唆