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「ご冥福をお祈りします」って簡単に言いたくない

誰が言い出したのか知らないけど、いつのまにか決まり文句になって、みんなが日常的に使うようになった言葉って、結構ある。

たとえば、Twitterの「フォロー外から失礼します」。
普通に「はじめまして」とかで切り出せばいいのに、みんな律儀に「フォロー外から失礼します」って使ってるふしぎ。

とりあえず使っておけば間違いない感じもあるけれど、そもそもルールやマナーで決められているわけでもないのに、自分も同じように使わなきゃ失礼かもしれないっていう強迫観念。
さらに、「フォロー外から失礼します」ってとりあえず言っておけば暴言が許されるって勘違いした人も増えてしまい、その面倒くささにみんなが気づいたのか、最近はあまり見かけなくなってきた印象があります。


そして、古くから使われ、最近特に見かけるようになっているのが「ご冥福をお祈りします」

【冥福】とは、「死後に得られる幸福」のこと。
「ご冥福をお祈りします」とはつまり、“天国でも幸せに暮らせますように”という祈りの言葉。

著名人が亡くなると、
「あの人、亡くなったんだ……ご冥福をお祈りします」
というふうに、SNSもブログも、どこもかしこも「ご冥福をお祈りします」だらけ。

もちろん、故人の死を悔やむ気持ちは素晴らしいものだし、それを表明するのはなんら悪いことじゃない。
けれど、あまりにも使われ過ぎていて、すっかりライトな表現になってしまった印象が否めません。
それこそ「とりあえず使っておけば間違いない」感。
「おつかれさまです」とたいして変わらないニュアンスで使われていると思えてしまうようなカジュアル感。

※仏教用語である「冥福」は、宗派によっては不適切な場合もあるのだけど、本題とずれてしまうので、ここではあえて割愛します。


特に今年は、連日ワイドショーで特集されているように、日本中から愛されている人気俳優が、立て続けに自ら命を絶ちました。
「まさかあの人が……」と、誰もが混乱しただろうし、悲しみに暮れ、茫然としてしまったと思う。

僕なんか、竹内結子が死んだって、まだぜんぜん信じてない。
「竹内結子」と「死」がまったく結びつかない。
は? どういうこと? 映画の中の話でしょ? そうでなきゃおかしいよ。現実に竹内結子が死んだなんて。

それでネットを開いたら、やっぱりみんなはいつものように、「ご冥福をお祈りします」ってつぶやいてた。

僕は、まだぜんぜん納得してない。
生前、故人がなにを悩んでいたのか、もっと考えたい。悩みたい。
故人を苦しめていたものがあったとしたなら、他の誰かが同じように苦しまないように、もっと怒りをぶつけたい。
だから僕は、「ご冥福をお祈りします」なんて、そんな簡単に締めくくりたくないと思った。


もちろん、トップスターの彼らがなにを悩んでいたのか、僕なんかがいくら考えたところで解りっこないことくらい知ってる。
けれど、そうして故人を想い、なにがつらかったんだろうと考え、悩むことも、故人の死を悔やむひとつの形なんじゃないだろうか。
「ご冥福をお祈りします」とつぶやくのは、その後でも遅くないんじゃないかと、僕は思えてならないのです。


死んだなら
何人泣いて
くれるかを
羊のように
数えて眠る


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