ヒトハトどもの夢の跡。【ショートショート】
金のドレスやスパンコールのタキシード。
伝書鳩パーティーに参加する人達の服装が眩い。
三百人はいるだろうか。
だが人々のざわめきは無い。
なぜなら皆、
唇を絹糸で縫いつけているからだ。
会話を楽しむには
肩に止まる伝書鳩に手紙を託す。
メモ紙にさっと書き込み、
それを鳩の脚に結わえて相手に飛ばすのだ。
皆ひっきりなしに鳩を飛ばすものだから、
部屋の中は羽音で喧しい。
手元のワイングラスに羽根が浮かんでいる。
男同士のいざこざがあったらしく、
二羽の鳩が激しく男の間を往復していた。
怒りで顔を赤くした男が
荒々しく鳩に手紙を括り付ける。
慌てた鳩は他の鳩にぶつかり
手紙を取り落としている。
誤って受け取った女が
罵声の手紙をつまみあげて逆上した。
「アンタに豆鉄砲喰らわせてやるわ!」
女は唇の絹糸を破り叫んだ。
すると人も鳩も一斉に動きを止めた。
辺りは無音の世界となり
砂になって崩れ始めた。
ここが鳩代理戦争の跡地だったと知ったのは、
自分の体が消える瞬間だった。
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田原にかさんの企画に
参加させていただきました。
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紙媒体の本を創りたい。という目標があります。