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りんごのはなし。
赤いりんごを両手で包むと
冬の蝋燭みたいに輝いた。
つややかで、するするとしたりんごの肌。
このつやは、
りんご自身がまとう天然のワックス。
赤いりんご、とひとくちにいっても
個性はばらばらだ。
大きくて華やかなジョナゴールド、
女の子のほっぺみたいなふじ。
紅玉や秋映、シナノスイート、つがる、
名前も見た目も様々な赤いりんごたちが
私を迷わせる。
どれにしようか。
♧
子供の頃
冬になると親戚から
箱いっぱいのりんごが送られてきた。
近所にお裾分けしても
まだまだあった。
おがくずの中に埋もれたりんごを取り出して
台所に持っていくと、
母がうさぎの形に皮をむいてくれた。
雪の降る日は
家族みんなでおおきな雪だるまを作り、
りんごを目のかわりにした。
冬のりんごを見ると
子供時代の雪遊びや食卓、暮らしを思い出す。
思い出の中の懐かしい味は
なぜか美味しい記憶になっている。
もしかしたら
酸っぱいりんごだったのかもしれないけれど、
あれが一番美味しかった、なんて
思うのだった。
おふくろの味だとか
子供のころ初めて食べた外食の味だとか
記憶の中で湯気を立てる
あの日くちにしたものは、
みんな美味しかったことになっている。
実際の味に
思い出エッセンスや心情スパイスが入って
最高の逸品になるのだろう。
シャクシャクとりんごを食べながら、
今年の年末の帰省のことを計画する。
そんな秋晴れの午後だ。
♧
ところで上の写真のふたつ並んだりんご、
影もかわいいと思ったのだけれど
そう思うのは私だけかな。
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