十月を充月にするって言ってね。
十月らしさ、秋のはじめらしさとは何だろう。
空の高さと、湿度の低い涼しい風と、
夏の間は身を潜めていた花たちの香りのこと。
金木犀が咲き始めた街を、
長袖のブラウスで歩くこと。
だとしたら
熱い陽射しを避けて日傘を差し、
半袖のシャツで出歩く今は、
いったい何という季節と
名づければいいのだろう。
きっともうすぐ。
もう少しで秋は来るはずと何度も思い
待ち焦がれていたのに、
秋の使者の姿は
街なかにも、銀杏や楓の並木道にも、
見当たらないのだった。
それならば
自分から秋を迎えにいこうではないか。
こっくりと落ち着いた
深いえんじや茶色の服を着て、
大きな金木犀の木がいる場所へ
様子を見にいってみた。
まだ蕾は小さく固く、
香りをひとつも漏らすまいと
ぎゅっと閉じているけれど、
佇まいは九月とはたしかに違っている。
葉の先から、
準備が整っている知らせが滴っていた。
待ちわびる気持ちは、木も私も同じなのだ。
***
十月になりました。
今年もあと三ヶ月だなんて!
思えば先の九月は私にとって解放の月でした。
心が軽くゆるく広がって、
見落としていた内側のことにも
気づくゆとりが生まれました。
何かを追いかけたり無理したりといった、
ザクザク挑むことが必要な時期もあるけれど、
今はそれをいったん箱に納めて
外からただ眺める時。
そうすることで、見えてきたものがありました。
うれしいことです。
わくわくします。
そのわくわくが、
また新しいわくわくを呼んできます。
今までとは違う循環が、
大きな水車のようにゆっくりと
回りはじめているのを日々感じています。
きょうも心のなかに
透明な水の流れる音が聴こえます。
あなたは今年の残りの三ヶ月を
どう過ごしたいですか。
願わくば
笑っていられる日が一日でも多く
やってきますように。
実りある充月(十月)をお過ごしください。
***
お知らせです。
日本左利き協会さんのホームページにて
掲載させていただいているショートストーリー
『春を歩く』[再会]の後編が
公開となりました。
お時間ある時にでも
お読みいただけるとうれしいです。
こちらでの連載の始まりの物語(2023年5月)
『祝福の手をきみに』の、その後のお話です。
私が書くものには
異形の人たちがよく登場します。
(右手が桜の花びらに覆われている人
左手が葉っぱの人
口から花を産む人
肩甲骨が翼になった人
植物化して木になった人 などなど)
それはおそらく、
自分が他の人のようには
普通に生きられなかったことを
映しているのかな、と思う時があります。
異形じゃないように振る舞う方法を考える
というより、
異形でもいいんじゃない?
と思えれば。
同じような気持ちを抱えている人も、
いつか一緒にそんな境地に立てればいいなと
思っています。
私はまだまだ未熟者ですけれどね。笑
ただひとつ変化があったのは、
自分の意志をもってより良い方を
選び取る勇気を出せるようになったこと。
そのおかげで
ずいぶんと生きやすくなったのは
本当のことです。