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初めての鬼になった日。【ショートショート】

「ママが病院に運ばれたよ。
おじさんが病院まで連れて行ってあげるから
一緒に行こう」

「ママが?ケガしたの?」

「そうだよ。キミに会いたがってる」

「ママは朝ご飯食べる時は元気だったのに」

「そういうことって急なんだよ」

「おじさんは誰」

「ママの友だちだよ」

「わたし、おじさんのこと知らない」

「そうだろうね。
キミが幼稚園に行っている間だけ、
ママとおじさんはお食事をしたり
遊んだりしてたから。
これからはママとおじさんとキミで暮らすんだ」

「パパはしってるの?」

「知らないよ。
パパにはおじさんは見えてないんだ。
ママの事もね」

「パパには見えないのに
どうしてわたしには見えるの」

「キミはママの子どもだからさ。
パパは結局はママとは他人だろう」

「他人じゃないよ。パパだよ」

「とにかくおじさんと行くんだ、ほら」

音がするほど強くわたしの腕を掴む間男の目に、
わたしは玩具の鋏を刺した。
わたしの世界は真綿のお布団。
汚したらだめ。

あの日わたしは初めての鬼になった。


『本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です』


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田原さんの企画に参加させていただきました。
ありがとうございます。

ちょっと怖い感じ仕立てにしました。うはは。


文章を書いて生きていきたい。 ✳︎ 紙媒体の本を創りたい。という目標があります。