さよならべいべ。
神様。
藤井風という人をこの世に遣わしてくださって、
ありがとう。
この音楽を聴く前の世界にはもう戻れないよ。
私が息をして歩いて感じるこの世界。
今までいた世界が
どれほど幼稚で
気の毒な世界だったかを
知ってしまったんだ。
この人の音楽のせいで。
♧
心はメロディに導かれてゆく。
決して明るいわけじゃない詞が
このメロディと出会う時、
夜の中の灯火が見えてくる。
秋の夕暮れの靄のような
しめやかな色香。
男性のハイトーンボイスが
流行りの昨今だけれど、
それももちろん
突き抜ける感じが素敵だけれど、
私はスモーキーで深い声が好きなのだ。
色気のある声と歌い方は
ずっと聴いていたくなる風の音みたいだ。
♧
本来の私は
『何なんw』
『罪の香り』
『死ぬのがいいわ』
『調子のっちゃって』
あたりを激しくリピートするはずだ。
しかし。
どうしても歌詞が
私の行く先に立ちはだかる。
少しこわいと思った。
生々しさや、本音が覗く。
日々の中での葛藤や素朴さも見える。
綱渡りをするように意味を受け取ってゆく。
でも、それも悪くない。
生きている
息づく言葉が情景を見せてゆく。
ひりひりする。
見透かされたような気持ちにすらなる。
美しいメロディがそれを中和している。
正直な人だ。
♧
オリジナル曲のCDの他に
フォトブックと
カヴァー曲のみのCDもついている。
カヴァーも
一時も目を離せない(耳を離せない)。
中でも私は
『Shake it off』と『close to you』の
チャーミングなアレンジの
虜になってしまった。。
私は自分が音楽家じゃなくてよかった。
心底そう思った。
もしも私が音楽家だったら、
彼の音楽に
強烈に嫉妬していたことだろう。
私はリスナーだから、
酔いたいだけ酔うことを許される。
なにかをこんなにも好きになる気持ちを、
思い出させてくれるアルバムだった。
全人類に聴いてほしい。
♧
それから。
これは余談だけれど、
フォトブックを見てちょっと驚いたこと。
以前私がnoteに書いたものに登場した
『洸』(仮名)のモデルである友人の
はたちの頃に、
藤井さんはよく似ているのだった。
髪型のくしゃっとした感じも、
懐かしいとさえ思った。
洸(仮名)のことを思い出させてくれて
ありがとう。
またひとつ感謝することが増えた。
♧
自分を奮い立たせる
力強いものが『勝負曲』だとすると、
私がこの曲に感じるものは
勝ち負けに挑むようなものではないから、
すこしニュアンスが違うのかもしれない。
けれど。
この曲たちに出逢えたことが嬉しく
何度でも聴きたくて、
音楽を愛する心の底まで降りて行って
たゆたっていたいと思うことは、
ある意味
私の時間と魂の全てを捧げる
勝負曲、だと感じる。
ああ。尊い。
美しい音楽は、罪作りだ。
もう、過去の世界には
さよならするしかないんだよ。
***
『さよならべいべ』は
アルバムの中の曲のタイトルです。
アルバムへの音楽レビューとして
書かせていただきました。
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