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さよならべいべ。

神様。
藤井風という人をこの世に遣わしてくださって、
ありがとう。

この音楽を聴く前の世界にはもう戻れないよ。

私が息をして歩いて感じるこの世界。
今までいた世界が
どれほど幼稚で
気の毒な世界だったかを
知ってしまったんだ。
この人の音楽のせいで。

心はメロディに導かれてゆく。
決して明るいわけじゃない詞が
このメロディと出会う時、
夜の中の灯火が見えてくる。
秋の夕暮れの靄のような
しめやかな色香。
男性のハイトーンボイスが
流行りの昨今だけれど、
それももちろん
突き抜ける感じが素敵だけれど、
私はスモーキーで深い声が好きなのだ。
色気のある声と歌い方は
ずっと聴いていたくなる風の音みたいだ。


本来の私は
『何なんw』
『罪の香り』
『死ぬのがいいわ』
『調子のっちゃって』
あたりを激しくリピートするはずだ。
しかし。
どうしても歌詞が
私の行く先に立ちはだかる。
少しこわいと思った。
生々しさや、本音が覗く。
日々の中での葛藤や素朴さも見える。
綱渡りをするように意味を受け取ってゆく。
でも、それも悪くない。

生きている
息づく言葉が情景を見せてゆく。
ひりひりする。
見透かされたような気持ちにすらなる。
美しいメロディがそれを中和している。
正直な人だ。


オリジナル曲のCDの他に
フォトブックと
カヴァー曲のみのCDもついている。
カヴァーも
一時も目を離せない(耳を離せない)。
中でも私は
『Shake it off』と『close to you』の
チャーミングなアレンジの
虜になってしまった。。

私は自分が音楽家じゃなくてよかった。
心底そう思った。
もしも私が音楽家だったら、
彼の音楽に
強烈に嫉妬していたことだろう。
私はリスナーだから、
酔いたいだけ酔うことを許される。
なにかをこんなにも好きになる気持ちを、
思い出させてくれるアルバムだった。
全人類に聴いてほしい。

それから。
これは余談だけれど、
フォトブックを見てちょっと驚いたこと。

以前私がnoteに書いたものに登場した
『洸』(仮名)のモデルである友人の
はたちの頃に、
藤井さんはよく似ているのだった。
髪型のくしゃっとした感じも、
懐かしいとさえ思った。
洸(仮名)のことを思い出させてくれて
ありがとう。
またひとつ感謝することが増えた。

自分を奮い立たせる
力強いものが『勝負曲』だとすると、
私がこの曲に感じるものは
勝ち負けに挑むようなものではないから、
すこしニュアンスが違うのかもしれない。
けれど。
この曲たちに出逢えたことが嬉しく
何度でも聴きたくて、
音楽を愛する心の底まで降りて行って
たゆたっていたいと思うことは、
ある意味
私の時間と魂の全てを捧げる
勝負曲、だと感じる。

ああ。尊い。
美しい音楽は、罪作りだ。

もう、過去の世界には
さよならするしかないんだよ。

***

『さよならべいべ』は
アルバムの中の曲のタイトルです。

アルバムへの音楽レビューとして
書かせていただきました。


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