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君たちはミライエどう生きるのか。官民が連携した新しい形を創ろう

2023年7月、長岡市にまちなか図書館やコワーキングスペースなどを併設した【ミライエ長岡】の西館がオープンしました。
現在長岡市では、中心市街地活性化のために行政が様々な取り組みを行っており、ミライエ長岡もその一つ。2025年の全館オープンに先立ち、一部(西館)が先行オープンしました。

すでに長岡駅前には、市民交流スペースの【アオーレ長岡】、市民が楽しく学べる公共スペース【まちなかキャンパス】や子育ての駅【ちびっこ広場】といった施設があり、学びや商業振興、交流をテーマにした【米百俵プレイスミライエ長岡】が加わる形で誕生しました。
正直、ここまでものすごい公共スペースをまちなかに次々と作る長岡はすごいなと思う反面、予算は大丈夫なのかな?うまく活用できるのかといった不安な部分もたくさんあります。

中心市街地活性化のために行政があれこれを行う事例はたくさんありますが、正直な話、実績としてはなかなか良い例がないということも感じています。
※この「良い」という判断は、にぎわいが作れて人が流動的に動いたことや、まちなかでイベントがたくさんできるようになった、などの価値ではなく、商業的な視点や、まちなかを弱体化させてしまった要因の一つでもある大型ショッピングモールなどと比べてどのような人の動きがあるのかなど、様々な視点での僕なりの考察です。

行政主体では本当の意味での活性化は難しい、失敗事例ばかりだと批判的な意見もよく聞こえてくるし、僕自身もそのような意見がないわけではありませんがまだまだ可能性を秘めているし、それに気づいていて地元を大切に思うのではあれば動かなければいけないとも思っています。
その上で、行政と民間企業との連携がもっとうまくできるようになることで、本当の意味での活性化になる可能性があるのではないかと考えています。

「これが課題だ」とかダメな部分でなく、俯瞰的に考えてそれぞれの立場を考察すること。今日はそんな、これからの行政と民間の在り方について少しまとめてみようと思います。


1、行政主体による課題

行政は、当然ですが市民からの税金で事業を行うところです。
市民がより楽しめる場所を作ったり、利便性を考えた様々な公共サービスを作ったり、地域経済発展・少子高齢化対策・移住促進など、多岐にわたる様々な目的で事業を行っています。

今回の【ミライエ長岡】に置き換えると、『まちなか図書館』という重要な役割を示す部分もありますが、それ以外にも『商業振興中心市街地活性化』という大きな目的があります。

ミライエ長岡は、米百俵の精神で知られる長岡の未来の発展のために『人づくり』『まちづくり』をキーワードに設立した施設です。
明治3年に全国で初となる国漢学校を作った場所で、現代社会に対しても同じ思いを込めて作られた施設。

また、長岡市には全国で2つしかない科学技術大学【長岡科学技術大学】やデザインを中心にした【長岡造形大学】など全国、世界から若者が集う学の場があり、その学生や大学の先生たちをまちなかに呼び、企業と連携することで『新たなビジネスを産み出す』ことや、スタートアップ支援など新たな産業のイノベーションを起こすための『きっかけづくりの場』になることが大きな目的です。

そのための様々な支援をできるように、ミライエ長岡には長岡商工会議所や銀行などを同スペースに配置しすることで支援体制においては完成度の高い仕組みを作っています。

さて。ここまでは、いい話。素晴らしい場所を作って動き出した施設の紹介です。
ですが、肝心な運営や中身については大きな課題が残るのが、行政主体の取り組みの難しいところと感じています。

その課題が、ソフト面。運営する中で、その取り組みを理解して実際に動き出す仕組みがうまく作りきれていないことが大きな課題であると僕は考えています。

これまでの高度経済成長時は、ハード面が強い行政サービスを作ればうまく回っていたものの、経済が停滞することでハード面だけでなく、まちづくりなどをはじめとする『人を主体とした支援(ソフト面の強化)』をしていかなくてはならないという壁ができました。

組織の中に担当部署があり、それに合わせて予算があり、各事業を進めることが行政の仕組み。
例えると、農業支援の農政化は農作物の支援をする、健康管理をする健康課は健康管理の支援をする。
その支援の中で、「地域の農産物を楽しみながら健康的になる食事法を提案する」ことで目標が達成できるのでは?というアイデアが生まれます。それにより、もしかしたら2つの部署が同時に何かの目的を達成することができます。

当たり前に浮かぶ考えですが、今の行政の考え方ではこれがなかなか難しいことでもあるのです。
それぞれに予算がありそれをしっかり使いきり目的や事業を行うことが行政の役割。ですが、変化が問われるタイミングでもある、時代の変化の中で現在の社会にとって不都合な部分もあるとのではないかと思います。

2、民間側の課題

民間の課題については本当に様々で、大手の企業から中小企業、個人事業主など範囲が幅広いと思います。
今回は、日本で最も多い中小企業の視点で考えていきます。

我が日本には老舗企業の数が世界でもトップクラス、そして新潟県も同じく老舗企業が多く存在し、そのほとんどが中小企業。新規創業率が全国でワースト5に入るほど新規参入や新しいビジネスが産まれづらい場所として、それが課題と言われることもある場所です。

しかし逆の視点で考えると、地域に根付いた企業がたくさんあり、顔馴染みな企業や安心できる存在として企業が街を潤すことができる面では、ある意味で価値のあることだと思っています。

しかし、近年では流通の発展や郊外への大型ショッピングモールの建設、ロードサイドへのナショナルチェーン店の出店なども相次ぎ、競争が激化。

決してこの競争が悪いわけではないですが、じわじわと始まった経済競争に地場産業は置いていかれてしまった、地場産業が弱まることで地域内経済も雇用も当然縮小していく。そういった印象を受けました。

この地域課題に対して地域事業者は何をするべきなのかは明確です。
ナショナルチェーン店と同じ土俵で戦えば負けるのは当然です。価格競争や広報など、全国に展開する大手と同じことをやっているのでは勝てるわけがない。
その中で、唯一無二のものを使って地域内が潤う循環、地域の魅力を感じられる取り組みなど、この場所でしか表現できない地域をデザインするという思考が必要だと考えます。

不景気になると、行政に頼る傾向がどうしても出てしまう。補助金などが悪いわけではなく、むしろ補助金をうまく活用して事業を発展するべきで、行政が何かをやってくれるという“いつの間にかできてしまった受け身のような体質”が民間の大きな問題であると僕は考えています。

3、地域をアップデートすること

そして本題。それぞれの大きな課題を俯瞰的に見て、何をしていかなければならないのかという話ですが、結局は“それぞれが変化に応じて変わっていかねばならない”ということだと思います。

どちらかが変われば良くなるのではなく、お互いが変わっていかなければいけないのではないかと思っています。
また、このそれぞれの課題に対して、「課題だけ見つめる=悪いこと」と直感的に感じる人もいると思いますが、僕は伝えたいことはそうではありません。

それぞれが、成り立ちやってきた取り組みは間違いではなく、行政的な視点で言えばしっかりと業務を遂行することがそもそもの大前提。
民間で言えば、老舗企業が伝統産業を守り抜いてきたという、変わらないものがあること自体が素晴らしいことであり、その伝統を守ることも老舗企業の大前提です。
その大前提の中で僕が変化を求めて辿り着いたのが、その大切なものを守りながらアップデートしていくという考え方です。

古き良き摂田屋の街。
同じ想いの人が集まれば、その土地の魅力と文化が正しく受け継がれていくはずです。

それぞれが時代の変化とともに変わっていかなければならない。それが、僕たちが伝えている「地域のアップデート」で、この考え方を広げながら自分たちで目にみえる実績を重ねることで、この重要性を伝えて広げていければと思っています。

4、そして僕たちはミライエの中にいる

僕たちは、長岡市が主催するミライエ長岡内レストラン・カフェの運営事業者の公募に立候補し、運営事業者として採択されました。様々な課題を感じる中で、行政施設の中にお店をオープンすることになっています。

冒頭で登場した【まちなか図書館「互尊文庫」】には併設するカフェ『BOOKMARKS CAFE』をプレオープンし、2025年には約70坪のスペースにレストラン、デリカテッセン、グローサリーを兼ね備えた複合施設の出店を計画しており、同時にBOOKMARKS CAFEもグランドオープンとなります。

『BOOKMARKS CAFE』
施設に訪れる人々の“お気に入り”に、思い出の“栞”のような場所になってほしいと思い名付けました。

これから約2年間、長いプレオープン期間の中でこの施設を、『民間の事業者として何ができるのか』『この場所を市民にとってどのような施設にしていくのか』を考えて実践していくこととなります。

全国の様々な事例を見ても決して簡単なことではないと思っています。むしろ逆風のような状態でのチャレンジだとも感じています。
このミライエ長岡とともに何ができるのか、SUZU GROUPとしても地域にとっても大切なことだと思うからこそ、この場所で何かを作っていきたい。

地域をアップデートする。僕たちの未来は自分たちで創るものだと考えています。

鈴木 将