楽屋で、幕の内。| 猫と猫のあいだに1(猫飼い戦記 外伝1)Nov.19
植物にとって鬼門。それが我が家だ。ガーデニングに興味があるが育てる才能がない私。植えれば掘る、かじる、抜くで邪魔をする猫。植物が育った試しがなかった。
(その様子は、お時間あれば戦記1からご参照くださると嬉しいです)
植えては掘り起こされて全滅。長年戦ってきた。そうだった。
だが、一回だけ、植物が何の障害もなく育った奇跡の2カ月がある。
今から5年ほど前のことだ。
前任猫が17歳になった。
洋猫が混じった大きめで中途半端な長毛種。ひいひいばあちゃんくらいが、ペルシャ…ということにしている。知人の獣医師さんも「洋猫混じっているね!」と言っていたので、まんざら嘘ではないはず。
人間の年齢で84歳だが、我が道を行く猫生活の王道を送っていた。
前任猫は気に入らないとひっかく、噛む、そして私と夫以外の人間は触れないというほど神経質だった。息子が生まれたときにはすでに居て、一緒に暮らしているのに息子が触ったことがない。
幼い息子がワンワン泣く、日向ぼっこ中の猫の横をただ普通に通り過ぎるなど、前任猫にとって何が基準か分からないが、礼儀を損なう振る舞いをすると、速攻でアイアンクロー炸裂、血の雨が降り不幸が訪れるという、息子に取ってはタタリ神のような存在。
どんな猫なんだ。
その年のゴールデンウィーク、前任猫は、パソコンの棚板の上に登れなくなった。もう年だからしょうがないね、と抱っこして棚に乗せた。棚の上で前任猫はいつものように昼寝をした。
食欲が落ちた。痩せてきた。
「もう年だからかな」
念のため、手があいていた夫が動物病院に連れていくことにした。
(続く)