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【週刊ユース分析】僕が「文武両道」を激しく勧める理由
さて今回のnote。タイトルを見ますと
「運動も勉強も、両方がんばろうね!」
みたいな、全大人たちが予定調和的に言いそうな内容に見えますが・・・さすがにそこはひとひねり入れて、少しだけロジカルに述べてみたいと思います。
■スカラーアスリートプロジェクト
京都サンガユースを調査していて知ったこの取り組み。
「真の文武両道を兼ね備えた世界的トップアスリートを育成する。」というのがコンセプトで、
京セラ、京都サンガF.C.、学校法人立命館の三者が核となって推進する、サッカーのプロ・トッププレーヤー育成プロジェクトです。
スポーツの素晴らしさと学業の素晴らしさの相乗効果でひとつの人格をより豊かに形成し、これから未来へとはばたく選手たちの可能性を広げます。
とあります。
サンガユースの選手たちは偏差値67オーバーの立命館宇治高等学校に進学し、文字通り文武両道の学生生活を送ります。
組織的に、明確に文武両道を掲げるクラブは実は少ないのですが私はこれをとても良いコンセプトだなー。と思っています。
それは、
サッカー選手であると同時に、社会人として世に出ていくにあたって、とっても大きなアドバンテージを手にすることが出来ると考えるからです。
少し具体的に述べていきます。
■できる大人の定義を、2つ持つ
最前線で競技をしてきた人(幼少期から周囲より優れた身体能力持った選手)というのは、はっきり言って社会人になってから重宝されます。
運動を重点的にしていた学生を、大手企業が欲しがる理由は大きく2つあると思っています。
一つ目は、
コピー能力が、著しく高い
と言う点です。
これは、コピーがうまい=独創性のない人材 を指しているわけではありません。
自分の周りにいる出来る人と、自分自身を客観的に見て、どうすれば出来るようになるかと言う分析が本能的にでき、
それ故、”やってみたらすぐできちゃう”のがトップアスリートの特徴と言えます。
これは生まれ持ったものなのか、培われるものなのか、具体的にはわかりませんが、このコピー能力というのは社会人にとってかなり大切な能力です。
コピー能力の高い人は得てして、「センスがいい」と評され、あっという間に物事を吸収してどんどん成長していきます。
もうひとつは、
「勝ち癖」がある
と言う点です。
これは個人的にも、とても大きな要素だと思っています。
不思議なもので、社会に出ると「結局 勝つやつ」というのがいます。
当然、良し悪しの波はあるのでしょうが、最終的にいつも勝つやつというのが、社会に出ると必ず居ます。
これが、いわゆる勝ち癖です。
全国大会、あるいはそれに届かなかったとしても同等レベルの経験がある人物と言うのは、この「勝ち癖」を持っています。
これが社会人になってからの勝負どころで大きな力を発揮します。
■北海道 双葉高校の奇跡
高校野球の話になりますが、覚えている方も多いのではないでしょうか。
13年の北海道秋季大会で、1年生だけの野球部員5人にスキー部、帰宅部の助っ人4人を加えて臨んだ双葉(現小樽双葉)が、3戦連続コールド勝利で、代表決定戦まで勝ち上がった。
という、漫画のような実話。
この弱小チームを支えたのが助っ人であるスキー部の面々。
野球部員のエラーで敗戦ムードになったところで「まだいける!」と声をかけ、自らホームランをぶちかまして逆転してしまいます。
このスキー部の助っ人メンバー。本業では総体王者になるほどの実力で、いわゆる「勝ち癖」の持ち主でした。
文中の引用ですが、これがすべてを物語っているでしょう。
1年生主将だった西谷勇輝は「野球部は1年生だけで、秋は経験を踏めればぐらいの気持ちだった。でも全国大会を目指しているスキー部の蔦さんたちからは、負けたくないという姿勢を強く感じた」と言う。
■それが文武両道だとなぜいいのか?
私が日々、情報収集している強豪クラブ・高校に所属するユースの選手たちは、厳しいセレクションを勝ち抜いているわけですから、すでにこの2つの資質は持ち合わせているのだと思います。
では、なぜ彼らこそ「文武両道」にこだわるべきなのか。ここからはその理由を述べていきます。
■圧倒的、機会の多さ
機会、すなわちチャンス。ここでいうチャンスとは、必ずしも自分自身で生み出す必要はありません。
感覚的な言い方になりますが、いわゆる進学校の場合、同級生の社会人になってからの活躍の幅が圧倒的に広いと考えます。
ある人は大きな会社の社長や役員になるかもしれないし、
ある人は自分で事業を興すかもしれないし、
ある人はメディアに露出する有名人になるかもしれないし、
ある人は首長になって国や地域を統括するかもしれないし、
ある人は知る人ぞ知る世界でものすごい有力者になっているかもしれない。
とにかく、
同級生たちのその後(の人生)が計り知れないのが、進学校の良いところです。
もちろん「進学校でなくたって。」と言うのはあります。ただ、確率的には進学校の方が社会的影響力が高く、よりバラエティに富んだ人材を創出しているのではないかと考えます。
つまり、
もともと成功するための素質を持つトップアスリートですから、その素質は、それを活かすためのチャンスにより多く囲まれている方が成功しやすい。
というロジックです。
これは得てして、アスリートとして一線を退いた後に大きな価値を生むのではないかと思います。
「こんなやつが知り合いにいる」というのは、そのスケールが大きければ大きいほど自らを助け、高みに導いてくれるはずだからです。
■定量的にモノを言う癖
これは川淵三郎キャプテンが、古河電工の社会人時代に培ったとても大きな要素である、と述べているものです。
早稲田大学時代に日本代表となり古河電工に入社。引退後に同社でサラリーマンをするわけですが、そこでの営業部長経験の中で培った定量的にモノを言う癖が、のちのJリーグ発足活動に大きく寄与したと述べています。
基本である5W1Hをより具体的に説く。
これが出来た川淵キャプテンだったからこそ、多くの人がイメージを共有でき、今のJリーグがあると言っても過言ではありません。
そして、
得てして本能的に優れた資質を有するトップアスリートは、この「定量的にモノ言う癖」言い換えれば定量的にモノを言う技術を、若き時期に大いに体得するべきではないかと思うのです!
これは選手としてチーム内でコミュニケーションを有するとき、指導者としてコミュニケーションを有するとき、
あるいは引退後に社会人として成功するために、とても重要な技術だと思います。
※参考にさせていただいたグロービズさんのインタビュー
これもまた、「進学校でなくたって。」と言うのはありますが、頭のいい奴らは圧倒的にこの、定量的にモノを言うという点で優れています。
そういう人たちに囲まれて日常的に会話することは、後にとても大きな価値を示すと川淵キャプテンが証明してくれています。
■最後に、
「人脈」という言葉はとても安っぽいので個人的にはあまり好きではありません。
確固たるロジックも無くあてずっぽうに名刺を配っても、それは自己満足のコレクションでしかないからです。
大人になってからせっせと名刺を配るぐらいなら、成功する資質を持った人たちは、2種(高校)年代からそれらをより活かす環境(人とのつながり)に身を置けばそれで十分だ。
というのがコアメッセージで、それが「文武両道」のススメです。
ワードとして陳腐化している”文武両道”という言葉の意味が、
「運動も勉強も、両方がんばろうね!」
ではあまりにも稚拙すぎる!というのがきっかけで、今回自分なりに整理してみました。
名選手であり、優れた社会人である方はたくさんいると思います。
そういった人たちは自らの「資質」と、「環境」とが上手く掛け合わさってきたのではないだろうか。
サッカー選手の人生も、サッカー選手ではない人生も一本の道でつながっています。紛うことのない自分だけの一本道です。
この道をより光らせるうえで、今回記した考え方がどなたかの一助となりましたらこんなに嬉しいことはありません。
今回も、最後までお読みいただき誠にありがとうございました!