#05【NZ旅行記】雨のオークランドで出会ったロングブラックと旅の終わり
サッカーと珈琲をとことん楽しむ旅行記。
旅のはじまり#01 はこちら。
雨の朝にロングブラック
8月2日。目が覚めると雨が降っていた。気温は11℃。
オークランドは1年のうちで7月の降水量が一番多く、次いで8月、6月も雨が多い。
グループリーグのポルトガルvsアメリカを観戦する以外、オークランドでは何も予定がなかった。
節電中なのかホテルの部屋はやや寒く、居心地は値段相応で、さっさとチェックアウトを済ませ、今日から泊まる向かいのホテルに移動した。
まずは朝食!
Googleマップでカフェを探し、ホテルから一番近いお店を目指した。
地図が指す場所は、店員1人と客1人が入れるくらいのスペースで、珈琲とクロワッサンやマフィンを販売しているテイクアウト専用の店だった。
次に近いカフェに向かった。
人気店なのか、私たちのように流れ着いた観光客が多いだけなのか分からないが、店の前は待つ人であふれていた。
こぢんまりとしたお店で、店の外にも小さなテーブルと椅子が並べられ、寒い日だったが外も満席だった。スーツケースを持った人が何人かいたから、やはり観光客が多いのかもしれない。
ドアの上に見覚えのあるロゴを見つけた。黄色のプレートに「Flight coffee」と書いてある。ウェリントンでカフェと間違えてたどり着いた珈琲豆工場のロゴで、偶然の出会いにちょっと興奮した。
しばらくして、窓際の小さなカウンター席に案内された。
小さな店内に小さなテーブルをぎゅっと詰め込んだ感じで、もちろん隣との間隔も狭いのだけれど、秘密基地にいるような居心地の良さがあった。
ニュージーランドに来てから、フラットホワイトが気に入り、そればかり飲んでいたが、初めてロングブラックというものを注文してみた。
少量のエスプレッソが入ったカップと、お湯が入った小さなピッチャーが出てきて、お湯は好みで調整するスタイルだ。いわゆるアメリカーノだが、ニュージーランドではロングブラックという名前で親しまれている。
まずはそのまま飲んでみる。
今まで飲んだエスプレッソのなかで一番力強い味がした。
つぎにお湯を全部注いでみる。
子どもの頃、初めてコーヒーを飲んだ日を思い出すような味わいだった。つまり……、とても苦かった。
ちびちび飲んでいると、だんだん口に馴染んできて、これはこれで美味しいなと思えてきた。
隣の人のお湯が入ったピッチャーは私の2倍ほどの大きさだったが、お湯多めとか、少なめとかオプションがあったのだろうか。
店員さんが忙しそうで確認できなかったけれど、牛丼の「つゆだく」のように裏メニュー的なオプションがあったのかもしれない。
食事は、前日の野菜不足を埋め合わせるため、アボカドディップ、トマト、キュウリのオープンサンド。レモンをギュッと搾って、いただきます!
周りの人が何を注文しているのか気になって見渡すと、ホットチョコレートと甘そうなデニッシュを食べている人がいて、そういうのもいいなと眺めながら、野菜がのったパンを頬張った。
後で調べたところ、お湯にエスプレッソを注ぐのがロングブラックで、エスプレッソにお湯を注ぐのがアメリカーノらしい。
本場ニュージーランドで飲んだロングブラックは、エスプレッソにお湯を注ぐスタイルだったが、何が正しいのか未だに分からない……。
応援する楽しみ・熱狂する楽しみ
夜、ホテルでテレビをつけると、ラグビーの試合が流れた。
自国でサッカーワールドカップを開催していても、ラグビーの試合を放送するのは、さすがラグビーの国だなと感心した。
客席無しのグラウンドで試合をしていて、社会人ラグビーのような、練習試合のような試合だった……。
Sky Sportsの番組なのだが、YouTubeで配信されそうな絵面だった。
見間違いかと思ったけれど、なんとトラックの荷台から応援している人もいた!
思わず笑ってしまったし、私もそこに行って、一緒に応援したいと思った。
なぜって、選手もスタッフもファンも、そこにいる人達みんなが楽しそうだから!
この映像を観ていると、スタジアムが専用だとか、屋根があるとか、観客が何人だったとか、どうでもいいと思えてきた。
どうしたらファンを増やせるか、盛り上がるのか、おせっかいながら考えることがある。リーグやクラブは色々な目標があるだろうけれど、ファンは選手を後押しして、全力で楽しみ、それを周囲に伝える、それだけでいいんじゃないかと思った。
「ファン」は「FANATIC(熱狂的な)」を略したものだ。もっと熱狂的に自由に楽しもうと心に誓った。
帰国後
楽しい旅は、あっという間に終わる。
冬のニュージーランドから、35度を超える日本に帰ってきた。
なでしこジャパンは決勝トーナメントに駒を進め、ノルウェーに勝利したが、準々決勝でスウェーデンに敗れ、ベスト8で幕を閉じた。
4ヵ月経った今も、あの時の熱狂を思い出す。最後までなでしこジャパンがトロフィーを掲げる姿を想像できたのは、幸せな時間だったと改めて思う。ビューティフルゴールで歓喜したことも、宮澤ひなた選手が得点王になったことも、あと少し進めず悔しい思いをしたことも、ずっと忘れないだろう。