失われた味
先に言っておくが、別に某ウイルスで味覚が無くなったわけでは無い。
――そんなことは誰も思ってない?
いやまあ、一応予防線は貼っておこうかなと。
最近、変な風に捉える人が多いから。
それはさておき、今日は僕の好き嫌いについて書いてみようと思う。
好き嫌いといっても、僕は特に苦手な食べ物は無い。
出されたものは何でも美味しく食べることができる。
――いや、味が明らかに良くないものや、見た目がグロテスク過ぎて食物と認識しかねるもの、昆虫食なんかは流石に敬遠してしまうから、「何でも」では無いが、とりあえず、余程のゲテモノでなければ食べることができる。
とはいっても、最初から好き嫌いが無かったわけではない。
高校の頃まではそれなりに苦手な食べ物があった。
僕は、とある出来事がきっかけで、好き嫌いを治そうと思い立ち、好き嫌いを努力でもって無くしていった人間だ。
では、そのとある出来事とはなんなのか。
――それは、祖父が作るがんもどきや厚揚げを二度と食べられなくなってしまったこと
誤解の無いように言っておくが、祖父はまだ生きている。
週末に山にハイキングに行くくらいにはピンピンしている。
では、何故食べられなくなってしまったかというと、祖父が営んでいた豆腐屋が続けられなくなってしまったからだ。
年齢が年齢で、もう限界だという事で店を閉めた訳だが、これによって祖父の作る、がんもどきなどが食べられなくなってしまった。
実は、中学生くらいまでは「がんもどき」や「厚揚げ」といった、練り物や豆腐を加工したものが苦手だった(油揚げは可)。
当然箸が進むはずもなく、食卓に出されてもほとんど食べなかった。
ところが、高校の時、たまたま冒険心が疼き、がんもどきを食べてみたら以外と美味しかった。
今度、がんもどきが出たらもうちょっと食べてみるか。
と、軽く考えていたのも束の間、それが最後の祖父のお手製がんもどきとなった。
なんというか、とても悲しかった。
ああ、もう2度と食べられないんだな。
と、後悔した。
それからは、食べず嫌いをしていた料理にも積極的に箸を伸ばすように心掛け、次々に好き嫌いを克服していった。
というか嫌いなものの、ほとんどが食べず嫌いなだけだったので、食べたら意外に美味しい、と気付くことの方が多かった。
これは僕の持論だが、好き嫌いが多い人の大多数の人は食べず嫌いがあると思う。
食べたことが無いのに、「これ嫌い~」って言っている人が一体何人いるのかは知らないが、食の経験値が少ない人は少なからずいると思う。
それから、小さい頃口に合わなかったモノが大人になった今なら美味しいと感じることも多々あった。
僕の場合は、金平ゴボウがこれに当たる。
かなり、衝撃的だったのを覚えている。
「うめぇ!」
って思わず口から出たからね。
もしかしたら、皆さんにも「嫌い」と感じている食べ物の中に、今なら食べられるものがあるかもしれないね。
――是非、食べてみてほしい。